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アンネの物語を現代に──「少女の悲劇」はポップカルチャーで生き続ける

Anne Frank Alive in Pop Culture

2018年09月21日(金)17時00分
ザック・ションフェルド

宿題をするアンネ  ADN-BILDARCHIV- ULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES

<『アンネの日記』との出合いが生んだ名盤から20年。普通の少女の悲劇がポップカルチャーで生き続ける>

若いソングライターが書店で『アンネの日記』に出合う。彼はその本を買って読み「すっかり夢中になった」。アンネの悲劇に深く心を動かされて何日も泣き明かし、時をさかのぼって彼女をホロコースト(ユダヤ人大虐殺)から救う夢を見る。「本を読んでいる間、彼女は僕にとって生きていた」

普通なら話はそこでおしまい。若者は自分の人生を歩み、アンネの物語は過去に、教室やホロコースト記念博物館に置き去りにされる......。だが、この若者は違った。彼はインディーロックバンド、ニュートラル・ミルク・ホテル(NMH)のボーカルにして創作活動の原動力、ジェフ・マンガムだったのだ。


マンガム(左)はアンネの物語をアルバムに織り込んだ

【参考記事】『アンネの日記』から明かされた「下ネタ」でアンネが伝えたかったこと

アンネの物語に魅了されたマンガムは、20世紀を代表する異例のカルト・アルバム『イン・ジ・エアロプレーン・オーバー・ザ・シー』を世に送り出した。「オランダ、1945」「ゴースト」などの収録曲は、歴史的詳細とヒステリックな憧れをない交ぜにしてアンネの物語を現代によみがえらせた。管楽器も取り入れて織り上げた万華鏡のようなタペストリーだ。

『エアロプレーン』は18年2でリリース20周年、インディーロックの聖典となって久しい。

その「古典」を改めて聞いて、ホロコーストの専門家やアンネ・フランク研究の専門家の意見が知りたくなった。『エアロプレーン』つながりで『アンネの日記』を知った人々ではなく、『アンネの日記』つながりで『エアロプレーン』を知った人々の意見を聞きたかった。

「聞いたこともない」人も

そこでアムステルダムのアンネ・フランク・ハウスに連絡を取った。アンネが1942~44年に隠れていた家を保存した博物館だ。スタッフは親切だったが、何の話か全く分からない様子だった。「音楽の専門家はいないのでお力になれません」と、スタッフの1人は言った。『エアロプレーン』は「聞いたこともない」という。ロンドンのアンネ・フランク・トラストの反応も似たり寄ったりだった。

一方、アメリカでの知名度ははるかに高い。ホロコースト研究者であるニューヨーク大学のロルフ・ウォルフスウィンケル教授は、アルバムの発表以来、アンネへの言及について感想を求められてきたという。「アルバムも歌詞も好きだが、個人的にはアンネの曲という印象は薄い。『オランダ、1945』でさえ歌詞は曖昧だ。アンネの名前を使うなというつもりは全くないが、こういう使い方は彼女を何かの象徴に祭り上げる風潮に拍車を掛けるだけだ」

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