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女性の心臓発作、女性医師が担当する方が男性医師より高生存率

2018年08月22日(水)15時00分
松丸さとみ

女性医師が増えると助かる命は増えるのか(写真はイメージ) AJ_Watt-iStock

<心臓発作を起こした女性患者の生存率に担当医師の性別による違いがあることが指摘された>

女性にとって、「女性医師を増やしてほしい」と願わずにはいられない調査結果がこのほど発表された。女性が心臓発作に襲われたとき、男性の医師に担当されると、女性の医師に処置されるよりも生存率が下がるというのだ。

約20年間におよぶ50万件を分析

調査を行なったのは、米ミネソタ大学のブラッド・グリーンウッド博士率いるチームだ。心筋梗塞などで病院へ緊急搬送された場合、女性の方が生存する確率が低いことが多くの調査で示されているが、グリーンウッド博士らはその理由が、医師と患者の性別の組み合わせにあるのではないかと考えたという。そこで調査チームは、1991年から2010年までにフロリダ州内の全病院の緊急治療室で処置された、ありとあらゆる心臓発作のデータを分析した。結果は学術誌の米国科学アカデミー紀要に発表された。

米国の科学誌サイエンティフィック・アメリカンによると、フロリダ州の健康管理当局が保有する前述期間中の約20年間のデータベースには、50万件以上が登録されている。グリーンウッド博士らはこれを次のように分類した。男性医師が男性患者を処置、男性医師が女性患者を処置、女性医師が男性患者を処置、女性医師が女性患者を処置、の4パターンだ。

1500〜3000人が死なずに済んだかも......

グリーンウッド博士によると、これらにはほとんど違いは見られなかったのだが、たった1つ、目立つ組み合わせがあった。男性医師が女性患者を担当した場合だ。心臓発作を起こした女性患者が男性医師によって緊急対応された場合、死亡する確率は全体の平均値と比べ12.4%も高いというのだ。

テクノロジーメディアサイト、ギズモード英語版によると、心臓発作で病院に担ぎ込まれた場合、死亡する確率は全体で11.9%だった。しかし患者が女性で医師が男性の場合だと、この確率は13.4%と高まった。さらに、男性医師に処置された女性患者は、病院の滞在期間も長くなる傾向にあったという。

この数字だけ見ると、違いはわずか約1.5%ポイント(12.4%)であまりたいした差ではないように思える。しかし調査チームの1人であるワシントン大学セントルイス校のセス・カーナハン氏はギズモードに対し、「もしも男性医師に処置された女性患者の生存率が女性医師に処置された場合と同じだったら、心臓発作で亡くなる女性の数は1500〜3000人ほど少なかったはず」と説明した。

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