ビットコインで離婚訴訟も アフガン女性に金融力を授けた起業家の奮闘
USING BITCOIN TO EMPOWER WOMEN
マフブーブはテクノロジーによる啓蒙活動を続ける JEMAL COUNTESS/GETTY IMAGES FOR TIME
<ビットコインとブロックチェーンを切り札に偏見の根強い国で女性の地位向上を目指す起業家の奮闘>
さまざまな分野で女性の活躍が目立つようになった今は忘れられがちだが、金融の世界で女性の権利が認められたのは、比較的最近のことだ。アメリカでは60年代、イギリスでは70年代半ばまで、女性は自分名義の銀行口座を持つことが法律上許されなかった。
多くの途上国では、今でもそのような状況が続いている。法律上は女性の権利が認められていても、女性蔑視の文化が解消されていないためだ。世界銀行のデータによれば、途上国の女性は男性に比べて、金融機関に口座を持つ人の割合が少ない。口座を持っていても実際には男性の家族に口座を管理され、自由に使えない場合も多い。
仮想通貨のビットコインを使ってこの問題を解決したのが、13年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたアフガニスタンのテクノロジー起業家、ロヤ・マフブーブ。彼女は社員の給料をビットコインで支払うようにした。フォーブス誌によると、夫から虐待を受け、資産も奪われていた女性社員の1人は、ビットコインでひそかに蓄えておいたお金を使い、離婚訴訟を起こせたという。
【参考記事】教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援
泣き寝入りさせないために
マフブーブは「デジタル市民財団」という非営利団体を設立し、ビットコインなどの仮想通貨、その中核を成すブロックチェーンといったテクノロジーをテーマに、途上国の女性を対象とする教育プログラムを提供している。このプログラムに参加したアフガニスタン女性は、これまでに9000人に上る。
「100人の女性たちの起業を助けてきた」と、マフブーブは言う。「次はアフガニスタンでビットコイン関連の国際会議を開き、彼女たちのビジネスについて多くの人に知ってもらう機会をつくりたい」ブロックチェーン技術が女性たちにもたらす恩恵は、自分の資産を自分で管理する道を開くことだけにとどまらない。このテクノロジーは、女性たちの権利を証明する機能も担える。
政治的な混乱が生じると、権利関係の記録が失われる場合が多い。マフブーブが言うように、新しい武装勢力が町を制圧したとき、真っ先に行うのが銀行の襲撃だ。
【参考記事】米軍アフガン増派、「勝利なき戦争」という大誤解