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「女子力」解放! サウジのファッション革命から見える国の明暗は...

Open Sesame: Saudi Fashon

2018年07月19日(木)12時00分
辻上奈美江(上智大学准教授)

消費喚起か税金の痛みか

16年に政府は30年に向けた展望「ビジョン2030」を発表。石油依存から脱却するための社会・経済・政治改革を打ち出した。社会改革ではこれまで考えられなかったような娯楽・文化活動の促進、スポーツの推進が掲げられた。

イベント開催許可を担う「娯楽庁」が創設され、コンサートやコミコンなどイベントを可能にする制度が整った。こうした社会改革には、人口の過半数を占める若者の閉塞感を打破する目的もあるが、同時にイベントを通じて国内消費を喚起することへの期待も強い。

しかしこの改革には、これまで無税であった国での付加価値税導入やガソリンの値上げなど、国民の痛みを伴うものも含まれている。1日500リヤル(約1万5000円)のチケットを購入してファッションショーに参加しても、そこで宣伝される商品は1人当たりGDPが2万ドル程度のサウジ人が手に届くものではない。4月以降のショーの影響もファッション業界や富裕層にとどまったに違いない。

娯楽庁に聞いたところ、今後は家族向けのイベントを促進すると意気込んでいた。今後の改革過程でも「女性」は重要なアクターで、同時にターゲットであることは明らかだ。同性だけのパーティーで見られるように、「女子力」が高い彼女たち向けにファッションショーを開催するなど、目の付けどころはよさそうだ。だが国民に経済的負担を強いながら、同時に消費を喚起しようとすることの限界も見えてくる。

他方で、これまでの方針を大転換して男女混合をやみくもに進めようとすれば、ファッションショーにはドローンが飛び交い、無機質な場になる。次回のファッションウイークは10月に予定されている。その盛況ぶりが改革の行方を占うことになるかもしれない。

[2018年7月 3日号掲載]

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