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BP原油流出後の姑息な火消し戦略

2010年5月20日(木)19時04分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

「はなはだしい怠慢」の有無がカギ

 だが同法には、事故前に「はなはだしい怠慢」があった場合には賠償額を1日あたり3000ドルまで増額するという規定もある(つまり1日につき2億1000万ドルということだ)。

 CBSの「60ミニッツ」で、破裂を防ぐ制御装置の電池切れや掘削施設の油圧系統に何カ所もの漏れがあったことが暴露された以上、同社も賠償枠の拡大を覚悟しているかもしれない。

 一方で環境保護活動家たちは、こうしたBPの「小細工」に冷淡だ。

「流出した原油1バレルあたりの高額な罰金を目の前にすれば、流出規模を少なく見積もりたいと思うのも無理もない」と、ピュー環境グループのクリス・マンは言う。

「流出している油の量は確かによく分からないが、それは最も適切な方法を用いた優秀な科学者の手で答えが出されるべきで、弁護士やMBA(経営学修士)の出る幕ではない」

 BPによれば今の時点で賠償額は60億8000万ドル。同社の第1四半期の収益と比べれば大した額ではない。だが同社の幹部がオバマ政権に対して長期的な環境的・経済的損害についてすべて賠償すると誓った以上、賠償額はどんどんふくれあがっていくだろう。

 地球環境への影響もさることながら、経営への影響もかなりのものになりそうだ。

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