最新記事
テクノロジー

TikTok全盛期は終わった(アメリカの規制法案とは別の理由で)

TikTok Is on the Decline

2024年3月18日(月)16時50分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)

ちょうど1年ほど前は、超党派の対中強硬論者らの要求が強まり、TikTokの禁止が今にも現実になりそうだった。だが、インフルエンサーらの激しい反発を受け、バイデンは禁止を思いとどまるどころか、自らも選挙活動に利用することにした。

(編集部注:だが結局、米下院は3月13日、TikTokは「敵対国からの安全保障上の脅威」だとして、運営会社バイトダンスが180日以内に米国内での事業を売却しなければアプリ配信などを禁止するという法案を可決した。法案は上院に送られる)

ただ、もはや若者におけるTikTokの人気は、ピークを越えたという指摘は多い。確かにTikTokは、今も文化的に巨大な影響力がある。ここ数カ月だけでも、高級トートバッグをはやらせたり、みかんの皮の剝き方に性格が出るという説を試す動画が大ブームになった。

だが、TikTokは今も、世代によるユーザーの偏りが大きすぎる問題を抱えている。なにしろアメリカのZ世代では62%がTikTokを利用しているが、30歳以上では25%以下に落ち込む。

失われる自由奔放な魅力

その一方で、フェイスブックやインスタグラム、X(旧ツイッター)などの老舗アプリは、TikTokの人気機能をどんどん取り入れている。YouTubeは、UMGがTikTokへの楽曲提供をやめた衝撃に乗じるかのように、短い動画にミュージックビデオをリミックスして投稿できる機能を追加した。

TikTokが爆発的な人気を集めたのは、こうした老舗ソーシャルネットワークでは満たされないニーズに応えたからだ。それなのに現在のTikTokは、自らの価値をわざわざ下げる戦略を取っているように見える。

グーグル検索が広告まみれであることは、誰もが知っている。だからZ世代はTikTokの検索機能を一番使ってきたのに、TikTokは「おすすめ検索ワード」などという機能を追加して、シンプルな検索をしにくくした。

音楽配信サービス、スポティファイの独特のアルゴリズムと最近の大幅な人員削減は、ユーザーが新しい音楽を発見するのを難しくした。TikTokにとってはチャンスだが、UMGとの契約打ち切りで、ユーザーが自由奔放に音楽を使うのは難しくなった。

広告だらけのインスタグラムのフィードに対して、ユーザーの楽しい動画が次々と表示されるTikTokのフィードは大きな魅力だった。それが今は、TikTokのフィードも広告だらけだ。

今はどのオンラインサービスも、AIによってユーザーが熱中しやすいように調整されている。だが、そのせいでTikTokでは、偽情報や極右プロパガンダが拡散しやすいエコシステムを確立されつつあるのかもしれない。

もしかすると、来年の今頃にはこうした問題点が全て是正されて、TikTokは再び世界制覇への道を歩んでいるかもしれない。だが、厳しい目で見れば、TikTokはイノベーションのピークを越えた可能性が高い。

今、私たちが考えるべきなのは、TikTokがこれからどうなるかではなく、次は何が登場するかだ。

©2024 The Slate Group

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、東部2都市でウクライナ軍包囲と主張 降伏呼

ビジネス

「ウゴービ」のノボノルディスク、通期予想を再び下方

ビジネス

英サービスPMI、10月改定値は52.3 インフレ

ビジネス

ドイツの鉱工業受注、9月は前月比+1.1% 予想以
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中