最新記事

AI

ChatGPTなど「生成AI」の監視を今すぐに強化しろ!元ホワイトハウス高官が提唱する3つのステップ

IT'S TIME TO ADDRESS THE RISKS OF AI

2023年5月17日(水)13時20分
ケネス・バーナード(元バイオセキュリティー担当米大統領特別補佐官、元米公衆衛生局医務総監補)

そこで私は、バイオセキュリティー国家科学諮問委員会(NSABB)の設立に動いた。04年以来、NSABB(私は現在もメンバーの1人だ)はNRC報告書の勧告を実現すべく、潜在的に危険なバイオ研究の監視強化に取り組んできた。だが多くの科学者の反対もあり、その実現には時間がかかっている。

その間に、一部のバイオ研究の安全性をめぐる論争が起きた。なかでも最も注目すべきなのは、鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスに関する一連の「機能獲得」実験だ。研究者はウイルス感染阻止の方法を学ぶため、遺伝子を操作して哺乳類への感染力を高めた。

新型コロナが突き付けた問い

私たちバイオセキュリティー関係者は、研究者が実験で冒しているリスク、特に実験室の事故がパンデミックを引き起こすリスクに警鐘を鳴らした。懸念を抱いた科学者は米政府に対し、危険を伴う可能性がある機能獲得研究への資金援助を3年間停止し、その間により強力な監視の仕組みを新たに構築するよう提言した。

しかし残念なことに、この監視強化の対象は、パンデミックを引き起こす恐れのある少数の(そして既知の)呼吸器系ウイルスに限定されていた。

実際にパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスについては、発生源をめぐって今も論争が続いている。

中国・武漢の研究所で生物兵器として開発されたと主張する向きもあるが、そうした声は少数派だ。この研究所が発生源だとみている人たちの間でも、偶発的に流出したとの見方が主流を占める。一方、研究所からの流出を否定する勢力は、コウモリの保有するウイルスが何らかの野生動物を介して武漢の海鮮市場でヒトにうつったと主張し続けている。

発生源は研究所か、海鮮市場か。私は毎日のように聞かれるが、「正直なところ分からない」としか答えようがない。

分かっているのは、今の技術なら既存のウイルスの遺伝子を改変してヒトに感染するウイルスを作るのは可能だ、ということである。

監視体制が不十分なら、意図的にせよ過失にせよ、遺伝子操作でパンデミックが引き起こされる可能性はある。だからこそ厳重な管理が不可欠なのだ。

それを知りつつ米政府は、過去20年間にわたり場当たり的な対応に終始してきた。リスクを評価し軽減できるよう、早期に一貫性のある指針を研究者や研究機関に示すことができなかった。そのため政府機関、企業、学界などがそれぞれ別個に研究計画を審査・監督することになり、さまざまな基準が混在している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

全米黒人協会、イスラエルへの武器提供停止をバイデン

ワールド

欧州議会選、オランダで開始 左派が優勢も極右躍進

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック小反落、米雇用統計

ビジネス

NY外為市場=ユーロ上昇、ECB利下げを消化 ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり

  • 5

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 6

    なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったの…

  • 7

    アメリカ兵器でのロシア領内攻撃容認、プーチンの「…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    世界大学ランキング、日本勢は「東大・京大」含む63…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 9

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中