最新記事

中国

全過程完全ロボット操作によるクローン豚誕生 中国の科学者が世界初成功

2022年6月2日(木)16時08分
佐藤太郎

研究者の負担が大きいクローニング

成都にあるクロノガン・バイオテクノロジー社の創業者パン氏は、以前は毎日1000以上のクローンを手作業で作っていたという。この作業は非常に時間がかかり複雑で、その結果、腰痛を発症してしまったそうだ。

実験室で生存可能な胚のクローンを作る、最も一般的な技術は体細胞核移植と呼ばれるもので、顕微鏡下で行われる手間と時間、そして集中力のいるプロセスである。

体細胞核移植には、卵細胞と体細胞の両方が必要で、後者はクローン化する動物から採取される。卵細胞から核を取り出し、体細胞の核と入れ替える。

2017年以降、制御アルゴリズム改善に注力

2017年、南海大学のグループはロボットを使って世界初のクローン子豚を作出したが、当時は、卵細胞の核の除去を含むプロセスの一部で、まだ人間の手が必要だった。

その後、ロボットの制御アルゴリズムを改良し、現在ではこの作業を自動的に行えるまでに改善させた。

Liu Yaoweiによれば、過去5年間で、クローン胚の開発の成功率は手作業では10%であるのに対し、ロボットでの成功率は、21%から27.5%に向上させることができたという。

「AIを搭載したシステムは、細胞内のひずみを計算し、ロボットに最小限の力でクローン作製を完了するよう指示できるため、人間の手による細胞の損傷を減らすことができます」

Liu Yaoweiは、米国やその他の欧米諸国からの輸入制限に振り回され豚肉を定供給できない懸念の中で、世界最大の豚肉消費国である中国の胃を支える、豚肉の自給自足につながる可能性を抱いている。

先出のパン氏は、ロボットクローンの実用化については、「産業界や一般市民の生活に大きな影響を与えることは間違いない」と期待を寄せている。

<合わせて読みたい>
女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚から育てる人工子宮システムを中国が開発
世界初の頭部移植は年明けに中国で実施

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中