最新記事

日本を置き去りにする 作らない製造業

「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営者が語る

2017年12月12日(火)17時03分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

takaguchi171212-2.jpg

ジェネシスの工場。日本人視察団に説明する藤岡社長。写真提供:ニコ技深圳観察会

「日本よりも深圳のほうが生き延びやすい」は幻想

――ベンチャー企業にとっては理想的な環境になっている。

もちろん甘い話だけではない。日本ならばツーカーの話が通じない。性悪説がゆえに騙されることなど日常茶飯事だ。もともと中国企業に製造を委託したが、うまくいかず私に助けを求めてくるベンチャー経営者も多い。

実際、深圳の中国企業にとっても楽な環境ではない。ともかく競争が激しく、突然の倒産や夜逃げはごくごく当たり前だ。近年は人件費の高騰が続いており、低付加価値のままではやっていけない。皆が生き残りを掛けてさまざまな道を摸索している。失敗して潰れる企業のほうが多いだろうが、生き残った顔ぶれのレベルは上がっている。

中国古代の呪術で「蠱毒」というものがあるそうだ。ヘビやムカデ、カエルなど毒を持つ動物を1つの壺に入れ、生き残ったものから最強の毒が得られるというものだ。深圳はいわば製造業の蠱毒を行うことでレベルアップしてきたのではないか。「日本よりも深圳のほうが生き延びやすい」「誰でも活躍できる街」などという、甘ったれた幻想は捨ててもらいたい。

深圳は確かに「すごい」。だが、今の深圳ブームは日本の現状に愚痴を言うためのだしにされている部分もあるのではないか。愚痴をこぼしながら生き残りのために戦うならばいいが、愚痴を言うだけでスッキリしていてはまるで無意味だ。

日本でもできることはまだまだある。わが社のクライアント企業は深圳のいいところを活用しながら、日本での事業に果敢にチャレンジしている。個人として深圳を土台にのし上がる道もある。日本市場進出のために日本人人材を欲しがる中国企業も少なくないのだから。

私も2001年にたった1人で台湾に放り込まれたことから、今の「アジア製造人生」がスタートした。最初は一言の中国語も話せなかったが、必死で言葉を習得し人脈を築き、今では中国で会社を経営している。

「深圳すごい」が一過性のブームで終わらず、日本人がハングリー精神を取り戻してチャレンジする機会となることを熱望している。


 『「ハードウェアのシリコンバレー深圳」に学ぶ
 ――これからの製造のトレンドとエコシステム』
 藤岡淳一 著
 インプレスR&D

※「日本を置き去りにする 作らない製造業」特集号はこちらからお買い求めいただけます。

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝 』(星海社新書)。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ2都市にロシアが攻撃、和平協議直後

ビジネス

乳児ボツリヌス症の集団感染、バイハート社の粉ミルク

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    「これは違法レベル...」飛行機で「史上最悪のマナー…
  • 9
    トランプを支配する「サムライ・ニッポン」的価値観…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中