「着物の未来をパリから守る」 ファストファッションが席捲するなか、究極のエコファッションを伝える女性

ファストファッションは自分を大切にしない衣料
福西さんと、スローファッションともいえる着物について話しながら、ファストファッションブランドのSHEIN(シーイン)に話が及んだ。SHEINは昨秋、パリの老舗百貨店に世界初の常設店をオープンし、現地で物議を醸している。2月には、フランスの中小企業相パパン氏が、同社のフランスでの売り上げが急落することを願うような発言をしたことが議論を呼ぶなど、同社の今後の展開が注目を集めている。
「ファストファッション支持者にとって、その魅力は、多額の費用をかけずに新しい服を買えることです。でも、ファストファッションは長持ちせず、すぐに着心地が悪くなり型崩れします。着ては捨てを繰り返していたら、結局お金を節約できないでしょう。
短期間だけ着られればいいのだという気持ちで生活していくことは、長い目で見ると自分のためによくないと思います。衣類をはじめ、"とりあえず" の物で身の回りを揃えたら、とりあえず生きていることになる。すぐにごみになるものに囲まれていると、"あなたは大した価値がありません"と、自分自身に常にメッセージを送っているようなものです。人間に与えられた、考える力を放棄しているような気がしますね。
ファストファッションについては、手持ちアイテムに合うかどうかをじっくり考えてから少しだけ買うフランス人も割といます。ただ、便利さに慣れた多くの人にとっては、"いま環境に配慮することが将来の自分の健康や生活によい影響を与える"という認識に切り替えるのは難しいかもしれません」
批判は気にせず前進
「着物は心に余裕を与えてくれる点でもおすすめです。私が所持する着物の多くは絹製ですが、繭玉を紡いだ何千匹もの蚕の命が着物に宿っている気がして、着物を着ていると"自分1人ではない"と思え、大きな自信がわいてくるのです。ファストファッションでは得られない感覚です(笑)。
私の活動は、誰に頼まれたわけでもありません。外国で着物文化を根付かせようなんて馬鹿げている、やめるべきだと時には言われます。でも、批判する人たちが私の代わりに活動してくれるわけではありませんし、いつか、たくさんの人たちが着物を1枚は持っているという日が来ることを夢見て、これからも活動していきます」
フランスでは2022年1月より、アパレル系企業に対して、売れ残りの衣類廃棄を禁止し、寄付やリサイクルすることが義務となっており、EUでも今年7月から大企業に同様の転換が迫られる(中堅企業は2030年から適用予定だが、企業規模により前後する模様)。企業が変わり、個人も少しずつ変化していけば、ヨーロッパにおいてサステナブルな着物への注目度はもっと高まっていくかもしれない。福西さんの地道な活動を応援したい。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。欧米企業の脱炭素の取り組みについては、専門誌『環境ビジネス』『オルタナ(サステナビリティとSDGsがテーマのビジネス情報誌)』、環境事業を支援する『サーキュラーエコノミードット東京』のサイトにも寄稿。www.satomi-iwasawa.com
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