最新記事
SDGsパートナー

大阪・関西万博で起きた「1200万回」の行動変容...使い捨てから「マイボトル給水が新たな選択へ」──「ステハジ」体験型啓発

2026年3月31日(火)15時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

万博での実装が示した「共創」と「行動変容」

大阪・関西万博では、会場内に52台の給水スポットを設置し、「マイボトル『給水』が新たな選択へ」を実装した。開催期間中来場者は約2500万人に達し、給水回数は約1200万回を突破、CO2削減量は約1000tに相当するという。さらに、万博協会が想定していた来場者1人当たりのごみ排出量344gに対し、実際の排出量は179gにとどまり、結果としてごみ排出量の半減につながった。

給水という行為が、単なる設備利用にとどまらず、行動変容へと結びついた点も特徴的だ。開幕日の4月13日に行われた観測では、給水を行った100人のうち、マイボトルで給水したのは12人にとどまり、88人は空のペットボトルを利用していた。しかし、1カ月後の5月13日の観測では、マイボトルで給水した人が53人と過半数を占め、以降、閉幕まで毎月13日に行われた観測でも、マイボトル利用者は半数以上を維持したという。

newsweekjp20251225041705.jpeg

大阪・関西万博の会場内に設けられた給水スポットに並ぶ来場者。マイボトルでの給水が来場者の行動として定着し、「給水」が新たな選択肢として日常化しつつある様子がうかがえる

こうした行動変容の背景には、OSGによる運営体制の工夫があった。給水スポットの運営には、通常のメンテナンススタッフに加え、内勤社員もボランティアとして参加。熱中症啓発アドバイザーの資格を取得し、来場者だけでなく、運営スタッフに対しても給水の意義や利用方法を伝える役割を担った。

来場者と接する機会の多い運営スタッフ自身がマイボトルを携行し、給水を体験することで、自然な声掛けや行動につながったという。OSGは、給水スポットを設置するだけでは、ここまでの周知や行動変容は生まれなかったと捉えている。

この運営モデルは、会期前から共創メンバーと実施してきた各種イベントでの実証実験の積み重ねから生まれた。アーバンリサーチ、コロンビア、象印マホービン、タイガー魔法瓶、ピーコック魔法瓶工業、ポケトル、エニタイムフィットネス、Jリーグ、マラソン大会、FM802、全国の地場優良企業展示会、自治体イベントなど、分野を超えた共創の中で得られた知見が、万博での運営に生かされている。

万博での成果は、レガシーとして次の現場へと広がり始めている。その一例が、五郎丸歩氏とAKIRA氏が主催する「IWATA Seaside Dream FES」だ。OSGはイベントスタッフ全員を対象としたマイボトル給水サポートの運営を担い、アーティストからは「準備が整えばペットボトルでの飲料ではなく、マイボトルでの給水・飲用は十分問題なく対応できた!」という声が寄せられたという。

その他、万博会場で給水体験を行った経験をきっかけに、市の全小中学校への給水スポット設置が各所で拡がりを見せている。

また、「マイボトル『給水』が新たな選択へ」という経験は、給水という行為にとどまらず、さらなる分野へと展開しつつある。「ステハジ」プロジェクトでは、この実践を起点に、業界初となる回収型衣類循環プロジェクトなど、新たな取り組みも共創の輪の中から生まれている。

こうした取り組みが評価され、OSGは今年度の「ニューズウィーク日本版SDGsアワード2025」において環境部門賞を受賞した。万博で示された実践は、人を巻き込み、体験を通じて習慣を変えていくサステナブルなモデルとして注目されている。

OSGはこれまでの実装の積み重ねを背景に、次の国際舞台も見据える。来年3月19日には、次の万博GREEN×EXPO 2027が横浜で開催を控えている。さらには「2030年国際博覧会」への展開を視野に入れながら、スポーツ、音楽、教育機関など、多様な分野との連携を通じて「マイボトル『給水』」の文化を社会に根付かせていく構えだ。

万博で示されたのは、設備や数値の成果だけではない。人を巻き込み、体験を通じて習慣を変え、その先に新しい社会の選択肢を実装していく──。今後、更なる「ステハジ」プロジェクトのプラットフォームを通じた共創の広がりに期待したい。

◇ ◇ ◇


アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

デンソー、30年度に成長投資と株主還元で8兆円以上

ビジネス

商船三井、30年度の税引前利益目標2割引き上げ 2

ワールド

タイ財務相、グリーンエネルギーの重要性指摘 「コロ

ビジネス

英GDP、第4四半期は前期比+0.1%で速報値から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 5
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中