ガラケー、MP3、フィルムカメラまで...平成に回帰する若者たちが「スマホ断ち」で取り戻すもの
Burned out by smartphones, young people are choosing flip phones, cameras and MP3 players instead
機能満載のスマホは確かに便利だが弊害も多い。「スマホ漬け」の不安から用途ごとに専用ツールを使い分ける若者が増えている SERGEY KOLESNIKOV/SHUTTERSTOCK
<1つの用途に特化した「シングルデバイス」が復権中。若者たちがスマホ時間を減らしてでも「得たいもの」とは?──>
目覚まし時計、地図、本、懐中電灯、時計、ラジオ、MP3プレーヤー、手帳、リモコン、カメラ、ボイスレコーダー......。これらの機能を1つに詰め込んだのがスマートフォンだ。
おかげで忙しい現代の生活はかつてなく便利になった。インターネットの無料通話やメッセージ、GPSによるナビゲーション、ドキュメント作成、エンターテインメント、さらに職場のメールにアクセスする認証アプリまでもが、日常的に不可欠な機能やタスクとなっている。
現代人の多くにとってスマホはもうオプションではない。常に持ち歩く「相棒」として、働き方、コミュニケーション、世界とのつながり方を再構築してきた。
だが、若者たちはそんなスマホ中心の生活に逆行し、あえて1つの用途に特化したシングルデバイスに回帰している。
ガラケーのように機能が限られた基本的な携帯電話(「ダムフォン」)、デジタルカメラやフィルムカメラ、MP3プレーヤーやiPod、キンドルなどの電子ブックリーダー、さらに紙の手帳や目覚まし時計などだ。
こうしたデジタルミニマリズムへの移行は、デジタル版の燃え尽き症候群や多すぎる選択肢など複数の要因が重なった結果だ。
スマホは複数の機能を1つのインターフェースに詰め込んでいるので、つい見てしまう。相次ぐ通知やユーザーが興味を持ちそうな投稿を優先表示する仕組みがこの状況に拍車をかける。

1日の半分はスマホ漬け
若い世代はスマホをもっと意識的に活用しようとしている。
スマホに何千枚もの写真やスクリーンショットをため込む代わりにカメラを買って人生の重要な場面や人を撮影する、iPodやMP3プレーヤーを買って広告や通知、アルゴリズムによるおすすめ抜きで音楽を楽しむ、などだ。
カナダの場合、成人のスマホ使用時間は2019年の1日3.2時間から年々増加して23年には5.65時間に達した。
22年のカナダ統計局の報告によれば、起床時と就寝前にスマホを見る人は全体の半数強、30分置きに見る人も43%に上ったという。
思春期の若者はデジタル依存度が特に高く、21年のスマホ普及率は87%、15~24歳の約88%が1時間に1回以上スマホをチェックするという。
スマホやタブレットは世界中で日常生活に深く根付いている。
スクリーンを見る時間は世界全体で1日平均6~7時間。うち4時間近くがスマホの画面で、フィリピン、ブラジル、南アフリカなどではしばしば5時間を超える。
アメリカやイギリスでは短めだが、それでも起きている間のかなりの時間をデジタルデバイスの使用に費やしている。
デジタルデトックスの試み自体は目新しいものではない。2000年代には既に「常時アクセス可能」な状態への懸念が高まり「ノー携帯」デーが推進された。
携帯から距離を置くという点は変わらない。しかし現在シングルデバイス回帰を推進しているのは、場所に縛られず国境を超えて働く人たちや自営業者、高度な専門人材、クリエーター、そしてネット文化で育った学生やその親たちだ。
デジタル離れに関する研究によれば、デジタルツールから距離を置く「スマホ断ち」の可能性が最も高いのは、常に時間に追われたり、認知能力に過剰な負荷がかかったり、オンとオフの境界がぼけたり、オンラインコンテンツにさらされ続けて心が疲れたりした場合だという。
その意味で、ダムフォンやカメラや電子ブックリーダーへの移行は、懐古趣味というより、集中して創造するのに役立つデジタルツールを使おうとする試みなのだ。
認知機能が10歳若返る
スマホを見る時間やSNSの使用を減らすことは、認知機能や心身の健康に大きなメリットをもたらす。SNSの使用を1日1時間程度に制限すれば、不安や鬱、取り残されるのではという恐怖心が軽減され、17~25歳の若者では睡眠が改善されるとの研究結果もある。
別の研究では、スマホのネット接続を2週間遮断したところ、被験者の91%で精神的健康、生活満足度、注意持続能力が向上。これは加齢に伴って低下した認知機能を10歳若返らせたのに匹敵する。社交や運動や自然の中で過ごす時間も増加した。
強制的なスマホ断ちの研究も、ネット対応デバイスを排除することの即効性を示唆している。
例えばスウェーデンの移民収容所では、収容者にネットに接続できない携帯電話を支給。行動を観察した結果、より時間をかけた意識的なコミュニケーションを取るようになっていた。
これは極端な例だが、だらだら見るようにできているデバイスを排除すれば、注意や行動のパターンがほぼ即座に変わり得ることを浮き彫りにしている。
自主的なスマホ断ちは広がりを見せている。例えば、デジタルデトックスを体験するイベントやツアーはオンラインの絶え間ない誘惑から離れるチャンス。電力供給のないキャビンや田舎の静養施設などで読書やボードゲーム、料理、自然散策を楽しみ、ネット接続しなくてはという強迫観念や、投稿や返信をしなければというプレッシャーから逃れて小休止できる。
スマホから完全に離れなくてもシングルデバイスを試すことは可能だ。多くの人は手始めにSNSやチャットなど、無駄な時間を費やしがちなアプリを開かずに済むよう、他の機能は別のツールで行えるようにしている。
簡単なのは、読書には電子ブックリーダー、寝室では目覚まし時計、通勤時に音楽を聴くのは専用の音楽プレーヤーを使うといった方法だ。
Brick(ブリック)などスマホの使用を物理的に制限できるアプリをインストールしたり、スマホ画面をモノクロに切り替えて、(脳の報酬系を刺激する)ドーパミンのループを断ち切って集中力を高めたりする方法もある。
スクロールに費やす時間が減って自由時間が年間1カ月増えたら、あなたはその時間をどう使うだろうか。そろそろタイムラインから離れて充実した時間を取り戻しては?
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Emma G Duerden, Canada Research Chair, Neuroscience & Learning Disorders, Associate Professor, Western University and Rubina Malik, Postdoctoral Fellow, Western University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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