最新記事
教育

海外で生活保護中でも奨学金返還が免除されない! 日本学生支援機構の督促に苦しむ海外邦人の悲鳴

2023年4月7日(金)16時40分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

イギリスの学資ローンは「残高帳消し」あり

教育費が高額といえば、イギリスの大学(学士課程は通常3年間)も学費が高いことは知られている。政府の学資ローンを借りる人が多く、卒業時の負債額の高さは話題になっている。イギリス政府資料によると、2021年秋入学者の場合、卒業時の負債額は4万5800ポンド(約750万円)。政府は、それらのうち、フルタイムの学部修了者では約20%が全額返済(負債額には利息とインフレ率が加算される)すると予想している。

では、残りの多くの人たちは返済していないのだろうか。その逆だ。返済は卒業後の収入が一定額(プラン2と呼ばれるイングランド地方の設定では、月収2274ポンド=約37万円、年収にして2万7295ポンド=約447万円)を超えると始まり、返済期間は最長30年と決められている。完済しなくても30年という節目までは返金し続け、それ以降の残高は帳消し(政府負担)になる。

返済開始後、失業したり給料が減ると、それに応じて返済額も下がる。収入が一定額に達しなければ、返済は始まらない。

ある調査結果(各種の割引番号を提供するマイバウチャーコーズが実施)のを見ると、14年ほどでローンを100%返済できる人、返済期間ぎりぎりの30年付近で完済している人、40~50%ほどしか返済できない人がいて、職種(収入)による返済の差がよくわかる。財務管理職のように早く完済できれば最終的に払う金額は元金に近いが、機械技師のように返済が長期に渡ると元金の1.5倍払うことになる。

返済金は給料から天引き

毎年いくら払い続けるのかを具体的に見てみると、先の一定額を少し上回る年収2万8000ポンド(約458万円)だと年間返済額は63.45ポンド(約1万400円)、年収3万5000ポンド(約570万円)だと年に693.45ポンド(約11万円)の返済といった具合だ。返済金は給料から天引きされる。自営業者の場合は申告制で、返済が滞ると債権回収会社が来て裁判になる可能性はある(イギリス最大の消費者支援サイトMoney Saving Expert)。

なお、この学資ローンは最近改正された。2023年秋入学者からプラン5が適用され、返済が始まる一定額が引き下げられた一方で返済期間が最長40年と長くなり、返済の負担は増すことになる。これにより、政府は、全額返済率が改善し、約55%になると見込んでいる。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送

ワールド

トランプ氏、カザフ・ウズベク首脳を来年のG20サミ

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

ウクライナ、複数の草案文書準備 代表団協議受けゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中