最新記事

教育

「女子にも権利がある」──11歳で結婚した私が教育を諦めない理由

2022年12月8日(木)12時10分
シャヒーン・ニアズ(看護師見習い)
シャヒーン・ニアズ

THE CITIZENS FOUNDATION

<児童婚の風習が残るパキスタンで家族を説得。電気もない家から看護師を目指すまでの軌跡>

私は8人きょうだいの1人として生まれ、両親を含め10人家族の家庭で育った。パキスタン南部シンド州のケティ・バンダー郡で育ち、今もそこで暮らしている。自宅や近所には電気がほとんど通っておらず、住居は土壁造り。太陽光発電で料理や携帯電話の充電が多少できるぐらいだ。

小さい頃は村に学校がなかったが、叔父はある程度の教育を受けた人で、基本的なシンド語を教えてくれた。祖母にはコーランの教えを習った。

学校には6歳から通えた。非営利団体「シチズン財団」が村に学校を作ったのだ。開校当初は子供を通わせる家庭は少なく、女子生徒のほうが多かった。「女は5年生くらいまで通わせて、その後は結婚や家事をさせればいい」という雰囲気だったのだと思う。

私の母も通学に反対だった。女の子は嫁に行っても困らないように料理や伝統的ししゅう、裁縫、若いきょうだいの世話などの家事を学ぶべきだという立場だった。父は母の意見に従うと言うだけだったが、当時同居していて発言力の強かった祖父が学校行きを後押ししてくれた。

母が働きすぎなのは分かっていたので、手伝う気持ちと学校へ行きたい気持ちの板挟みになり、苦しかった。母の気持ちを静めるために、何日か学校を休んで家にいたこともある。そのときは学校に戻れるように、叔父が母を説得してくれた。でも家で教科書に夢中になって呼び掛けに答えず、激高した母に教科書を火にくべられたこともある。

結婚の後も毎年闘いが

5年生になると、両親は私の結婚相手を選び、ニカという婚姻の儀式の準備を始めた。相手は1歳下の私のいとこで学校の下級生。ニカは私が11歳のときに執り行われた。結婚については何も教わらなかった。

儀式が終わり、別の家族の一員になったと実感したけれど、夫の考えや行動がまだ幼いことが気になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中