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「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法に包まれた『ウィキッド』が描く「現実社会の苦さ」

BRANDED AS A WICKED WITCH

2026年3月10日(火)18時33分
柴﨑小百合 (城西国際大学観光学部准教授)

映画『ウィキッド』ジェフ・ゴールドブラム演じる「オズの魔法使い」

ジェフ・ゴールドブラム演じる「オズの魔法使い」は実は魔法が使えない ©UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

人間性を奪うラベリング

オズでは「魔法使い」ウィザードが、大衆の圧倒的な支持を受けて国を統治しているが、童話でも示されるように彼には魔法の力はない。それどころか、ウィザードは国を安定させるという名目で動物たちを迫害している。

映画の前編『ふたりの魔女』では、エルファバが彼の嘘を暴き、糾弾するが、その結果「邪悪な魔女」の烙印を押され、反逆者として国から追われる立場となる。


エルファバがウィザードに宣戦布告すると、陰で彼を操る悪の権化マダム・モリブルは、次のような声明をオズ全土に拡散する。


おそろしい敵が現れました。緑色の肌は歪んだ本性の現れです。なんとおぞましい、なんと汚らわしい、邪悪な魔女

このようなラベリング、つまりレッテル貼りは、人間性を覆い隠す。「邪悪な魔女」と記号付けられたエルファバは人間性を剝ぎ取られ、抹殺すべき「敵」と見なされるのだ。善良なはずのオズの人々は声明を聞いて豹変し、「魔女を殺せ」と口々に叫び、暴徒と化す。

こうした状況では、残虐行為さえもが正当化される。それは前編のオープニングシーンによく表れている。この映画は、エルファバを模した巨大なわら人形に火を放ち、その死を祝う民衆の常軌を逸した姿から始まるのだ。このような集団心理の異常性は、ラベリングに大きく起因する。

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