最新記事
BOOKS

松本清張はなぜ「昭和の国民作家」に上り詰めたのか?...幼少期のエピソード・恋愛関係など、新資料が明かす「本格評伝」

2026年1月2日(金)10時25分
酒井 信 (明治大学准教授)

第3章では清張が小倉の高等小学校を卒業し、給仕を経て見習いの印刷画工となった青年期に光を当てる。第4章では清張が結婚し、朝日新聞西部本社に雇用され、兵卒として朝鮮半島で従軍した経験について述べる。本書では清張の恋愛経験や戦争体験についても、踏み込んだ記述を行う。

第5章では「西郷札」でデビューした後、「或る「小倉日記」伝」(1952年)で芥川賞を獲得し、『点と線』(1958年)や『眼の壁』(1958年)、『ゼロの焦点』(1959年)などのヒット作を次々と世に送り出し、人気作家となったプロセスを明らかにする。


第6章では、清張が所得で他の作家を圧倒し、60代、70代に入っても、長者番付の作家部門で上位に名を連ね、「昭和の国民作家」として人気を博した秘訣に迫る。新潮文庫に収録された清張作品の最新の発行部数や、各時代の清張の所得など、詳しいデータも示す。

この本では従来の清張に関する著作でほとんど言及されてこなかった幼少期のエピソードや、思春期以後の恋愛関係についても、詳細に述べている。清張の人生について、彼自身も書いていないことも含めて記述した、初めての「本格評伝」である。

貧しい家庭に生まれ育ち、高等小学校卒の学歴で給仕となり、印刷画工を経て大作家になった松本清張が体現した「どこまでも前向きな生き方」と、それを育んだ「昭和という時代の力」に注目していただければ幸いである。


酒井 信(Makoto Sakai)
1977年、長崎市生まれ。明治大学准教授。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教などを経て現職。専門は文芸批評・メディア文化論。著書に『松本清張はよみがえる』『現代文学風土記』(以上、西日本新聞社)、『吉田修一論』(左右社)、近著に『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)などがある。


newsweekjp20251224083344.png


 『松本清張の昭和
  酒井 信[著]
  講談社[刊]


(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


【関連記事】
なぜ私たちは松本清張に励まされるのか?...41歳でデビューした作家が描いた「不公平な時代」を生きる人間のまがまがしい魅力
「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ドラの見方が変わる話題書『女性たちの韓国近現代史』が教えてくれること
韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち...小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の爆発的ヒットの背景とは?

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがイランを水面下で支援 衛星画像提供やサイバ

ワールド

国連事務総長特使がイラン訪問へ、和平促す取り組みの

ビジネス

米国株式市場=まちまち、ホルムズ海峡期限控え交渉動

ワールド

USMCA再交渉、7月1日の期限後も継続の可能性=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中