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吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?

吉原が11年に1回の割合で全焼したワケ...実はほとんどが遊女の「放火」だった

MYMAPRANG -shutterstock-

<遊廓・吉原は約210年間に18回も全焼した。江戸時代の放火犯には「火あぶり刑」だったが、吉原を焼いた遊女が受ける刑罰はそれとは異なるものだった>

全焼するたびに妓楼が浅草、本所、深川へ「お引越し」。これだけ多くの火災が起きたのは、遊廓特有の事情があったという。

作家・永井義男さんの著書『図説 吉原事典』(朝日文庫)より、一部を紹介する──。


11年に1回のペースで全焼した吉原

吉原は公許の遊廓であり、火事で全焼するなどして営業できなくなった場合、妓楼(ぎろう)が再建されるまでのあいだ、250日とか300日とか期日をかぎって、江戸市中の家屋を借りて臨時営業をすることが許されていた。

これを仮宅(かりたく)といったが、住人の側からすると突然、隣に妓楼が引っ越してくるのと同じである。仮宅ができた地域は一夜にして遊里(ゆうり)に変貌した。

木造家屋が密集していた江戸は火事が頻発したが、吉原もしばしば火事に見舞われた。

明暦3年(1657)に千束村の地で営業を開始して以来、明和5年(1768)4月の火事を皮切りに、幕末の慶応2年(1866)11月の火事まで、合わせて18回も全焼している。

営業を始めてから明治維新までの約210年のあいだ、およそ11年に1回の割合で吉原は全焼した。驚くべき頻度である。そのたびに仮宅となった。

必須のガイドブック『仮宅細見』

仮宅が許されたのは浅草、本所、深川など、もともと岡場所があったり、料理屋が多いなど、歓楽の地だった場所が多い。

妓楼は許可された地区の料理屋、茶屋、商家、民家などを借りた。いちおう妓楼用に改装するとはいえ、にわか造りである。

とうてい本来の妓楼の豪壮さはない。張見世をするところもあれば、しないところもあった。また、張見世をする場合でも清掻(すががき、三味線によるお囃子)はなかった。

仮宅になるとさっそく『仮宅細見』が売り出された。仮宅はあちこちに点在しているため、客にとっては必須のガイドブックだった。

手ぬぐいで頬被りをした細見売りが道のあちこちに立ち、

「仮宅細見の絵図、あらたまりました細見の絵図」

と、声を張りあげ、売りさばいた。

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