最新記事

破壊的イノベーター

吹き替え34カ国語、字幕37カ国語 ネットフリックスのグローバル化推進役が考えるテレビの役割

2022年2月3日(木)16時15分
ネッド・ポッター
ネットフリックス グローバルTV部門責任者のベラ・バジャリア

JERRITT CLARK/GETTY IMAGES FOR PHENOMENAL X LIVE TINTED

<Newsweekが選出する「破壊的イノベーター50」。ネットフリックスのベラ・バジャリアは、いま世界で最も影響力のあるテレビ番組編成者の1人>

アメリカで昨年、韓国発のサバイバル劇『イカゲーム』と、黒人怪盗紳士が主人公のフランス発『Lupin/ルパン』という2つの外国語ドラマが大ヒットするなんて、誰が予想できただろう。

ネットフリックスでグローバルTV部門責任者を務めるベラ・バジャリアでさえ、予想するのは不可能だと言う。

バジャリアの仕事は、次のヒット番組を発掘すること。それが世界のどこか思いもよらないところから出てきたらなおいい。

「物語の輸出はハリウッドの専売特許だと広く思われてきたけれど、私の見るにハリウッドは作り手の幅が実に狭い」とバジャリアは言う。「私たちは世界中のあらゆるタイプのクリエーターに門戸を開いている」

ネットフリックスは世界最大の動画配信サービスであり、そこで働くバジャリアは世界で最も影響力のあるテレビ番組編成者の1人だ。バジャリアたちの番組選びが、私たちのいつも見ているテレビ番組のラインアップを左右していると言っても過言ではない。

ネットフリックスによれば、アメリカにおける英語以外の言語の番組の視聴は過去2年間に67%も増加した。日本のアニメの視聴は倍増し、韓流ドラマでは3倍になった。

コロナ禍でおうち時間が長くなったのもそうしたトレンドを後押しした。例えばドイツやメキシコ発の番組がネットで話題になると、世界中の人たちがこぞってそれを見た。

ネットフリックスもコンテンツの国境の壁を取り払う努力をしている。同社は全部で34カ国語の吹き替えと37カ国語の字幕を提供している。

ドラマが子供時代の力に

バジャリアの国際感覚は子供の頃の経験に根差している。ロンドンでインド出身の両親の間に生まれたバジャリアは幼い頃にザンビアに移り住み、9歳の時にロサンゼルスにやって来た。

「当時の私は茶色い肌のインド人の女の子で、話す言葉はイギリスなまり。周囲に溶け込むことが何より大事な年頃の子供にとっては手に余る状況だった」

「だからテレビをたくさん見てなまりを直そうとした」とバジャリアは言う。彼女は『奥さまは魔女』や『ゆかいなブレディ家』といったドラマをひたすら見てアメリカ文化を学んだ。そして2カ月もするとアメリカ人と同じ話し方ができるようになっていた。

「今はほかの人と違っていてよかったと思っているし、それが大きな力になっている。でも9歳の時の私にはそれは分からなかった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 影響抑

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中