最新記事

破壊的イノベーター

覚えておきたい「史上最大の温暖化防止企業」を目指す男、エナジー・ボールトほか創業

2022年2月2日(水)11時00分
ケリー・アン・レンズリ、メーガン・ガン
ヒリオジェン創業者/エナジー・ボールト共同創業者/カーボン・キャプチャー共同創業者のビル・グロス

COURTESY OF BILL GROSS

<Newsweekが選出する「破壊的イノベーター50」の1人。重力による蓄電システムを手掛ける企業など、3つのベンチャーに携わるビル・グロス>

三方面作戦でエネルギー問題の解決を目指す人物がいる。気候変動対策ベンチャーを3つも手掛けるビル・グロスだ。

エネルギー問題に目覚めたのは10代だった1973年。OPECがアメリカなどへの石油輸出を停止し、彼の家族も割当枠の2日に1度、5ドル分のガソリンしか買えなくなったときだ。

「すごい衝撃を受けた」と、彼は話す。

技術畑に進んだグロスは地球に優しいエネルギー利用の道を探り、ヒリオジェン社を設立。同社が開発したのは、自動制御で精密に向きを変えられる多数の鏡を砂漠などに設置し、太陽光を一点に集め1000度の高温を発生させるシステムだ。

この熱は鉄鋼やセメントの製造に利用できる。こうした用途のエネルギー消費は世界のCO2排出量の約10%を占め、自動車と航空機の排出量の合計を上回る。

グロスが設立に関わったもう1つの企業エナジー・ボールトの主力製品は重力による蓄電システムだ。位置エネルギーを利用し、泥と廃棄物を固めた重さ35トンのブロックを塔のように積み重ねる時に蓄電し、落下時に発電を行う。

他の蓄電装置に比べより安全・安価で長期間の蓄電が可能だ。ニュートン力学の基本に「高度なエンジニアリングを加えた」点がミソだと、IBMの研究開発を率いるバーナード・マイヤーソンは絶賛する。

そしてグロスが関わった3社目の新興企業はカーボン・キャプチャー。その名のとおり、大気中から炭素を直接回収するシステムを提供している。

将来的には自社を束ねて「史上最大の温暖化防止企業」にするのが今の夢だと言う。

●ビル・グロス
ヒリオジェン創業者/エナジー・ボールト共同創業者/カーボン・キャプチャー共同創業者

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅続落、一時5万円割れ 過熱感で調整深

ビジネス

日鉄、純損益を600億円の赤字に下方修正 米市場不

ビジネス

ユニクロ、10月国内既存店売上高は前年比25.1%

ワールド

中国、対米関税を一部停止へ 米国産大豆は依然割高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中