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映画

『イエスタデイ』が描いたビートルズなき世界

The Song, Not the Singer

2019年10月11日(金)19時50分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

優れたポップスの例に漏れず、ビートルズの音楽はその時代ならではのものだった。彼らが今の時代に曲を作っていたら、ギターでなくパソコンを使っていた可能性は高い。

しかし、有名脚本家という今や希少な存在の1人であるカーティスのこと。重要なのは誰がどう表現するかではなく、誰が作ったかというテーマになるのも無理はない。たとえビートルズはいなくても、この世界には彼らの音楽が必要だというのが本作のひそかなメッセージだ。

映画の終盤、悩めるジャックはあの人に会いに行く。そう、ジョン・レノンだ(ビートルズが存在しない世界に、レノンがいるのは不思議だが)。

無名のアーティストであるこのジョンは、私たちが知る短気で毒舌家のレノンとはまるで別人。ジャックに「彼女を愛しているならそう伝えなさい。誰にでも真実を言いなさい」と、ポール・マッカートニーのような甘ったるい助言をする。

だがジョンは幸せそうで、早死にもしていない。世界にはビートルズの音楽が必要だが、当のビートルズはそれなしのほうが楽しく生きていけるらしい。

YESTERDAY
『イエスタデイ』
監督╱ダニー・ボイル
主演╱ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ
日本公開は10月11日

©2019 The Slate Group

<本誌2019年10月15日号掲載>

【参考記事】『ジョーカー』怒りを正当化する時代に怒りを描く危うい映画
【参考記事】ゆるキャラで野心家。エド・シーランの超豪華な最新作がイマイチな理由

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※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

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