最新記事

BOOKS

アメリカのブックフェアで見た中国の「押し売り」プロパガンダ

2015年7月1日(水)18時30分
渡辺由佳里(アメリカ在住コラムニスト、翻訳家)

bookfair2.JPG

今年のBEAで中国は広大な展示スペースを買い取った

 BEAでは、人気作家のサイン会には何時間も前から並ばないといけないし、並んでも手に入らないこともある。それなのに、中国ブースの作家のサイン会には客がいない。偶然通りかかった人が本を取り上げて中を見るが、「無料です」と言われても「けっこうです」と断っている。第二次世界大戦でいかに日本が非道だったのかを延々と綴ったようなプロパガンダ本はタダでも読みたくないのだ。中国が買い取った広大なブースは開催期間を通じて客は集まらず、ガラガラだった。

 BEAの客たちは、中国の押し売り作戦には厳しかった。あれだけの費用を費やした結果は、こんな冷たい肩透かしだ。中国がアメリカに本を売りたいのであれば、投獄中の作家をプッシュしたほうがずっと効果的だ。世界はそういう作家の作品を読みたいのだから。

 そもそも、国家が展開するプロモーションは、「わが国のイメージはこうでありたい」、「売るとしたら、それに合うものだけ」という自己満足の押し売りになりがちだ。そして、客を無視した押し売りは、湯水のように金を注ぎ込んでも絶対にうまく行かない。

 日本政府も、BEAでの中国展示から学ぶことは少なくないと思った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国がカナダの選挙に執拗に介入、情報機関が警告

ワールド

英国境管理システムに一時障害、技術的な問題で 空港

ワールド

台湾軍、新総統就任前後の中国の動きに備え

ビジネス

英アストラゼネカが新型コロナワクチン回収開始、需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中