最新記事

新譜

王道だけど新しいスウィフトの進化

カントリーの歌姫の『1989』は音楽性も歌詞もパワーアップ

2014年11月12日(水)15時37分
フォレスト・ウィックマン

パワー全開 幅広い層の女性に支持されるスウィフト Christopher Polk/Getty Images for iHeartMedia

 テイラー・スウィフトのヒット曲といえば「レッド」「トラブル」「オール・トゥー・ウェル」など、どれも恋の歌。とはいえ甘い純愛ではなく、どちらかというと自動車事故の光景をバックミラーで眺めるようなものだ。恋に夢中になって自分をコントロールできなくなるさまと、その結末を振り返る。

 そんな2つの要素こそ、スウィフトが幅広い層に支持される理由の1つだ。若いファンは熱に浮かされるような恋に思いをはせ、大人のファンは苦い失恋の教訓をかみしめる。彼女のアルバムがいつも秋に発売されるのもよく分かる。
先頃リリースされた新アルバム『1989』からのシングルカット「アウト・オブ・ザ・ウッズ」も、まさにスウィフト的な一曲だ。あっという間にiTunes総合サイトの1位になったこの曲は、比喩を織り交ぜつつ、不安だらけのはかない恋を歌い上げる。

 中には比喩でなく、現実を反映した一節も。「あなたがブレーキを早くかけ過ぎたのを覚えてる?/病院で20針よ」。これは元カレがスノーモービルで負傷した思い出だと、スウィフトはローリングストーン誌に語っている。相手はかつて噂になったアイドルバンド、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズだと勘繰る声もある。

 そんな噂よりも注目すべきは、この曲がロックバンド、ファンのギタリストであるジャック・アントノフとの共作という点だ。歌詞はスウィスト的だが、音楽はアントノフそのもの。いつもおなじみのギターやバンジョーの代わりに、シンセサイザーやドラムを多用し、音楽的な広がりを見せている。

「アウト・オブ・ザ・ウッズ」は『1989』の全体の雰囲気を伝える曲だと、スウィフトは語っている。それならファンにとっては朗報だ。彼女らしいキレのいい歌詞と、幅広い音楽性を備えた曲がほかにもたくさん詰まっているということだから。クリスマスに向け、女子に欠かせない一枚になりそう?

© 2014, Slate

[2014年11月11日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

10月百貨店売上は+4.3%で3カ月連続増、円安で

ワールド

アングル:COP30に多数の米企業、トランプ政権不

ワールド

タイ10月輸出、予想下回る前年比+5.7% 対米は

ビジネス

ドイツのEV需要は「自主登録」が押し上げ、業界団体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中