最新記事
教育

養老孟司が「景気のいい企業への就職」より「自分の財産を持て」と語る真意

2024年7月29日(月)12時25分
養老 孟司 (解剖学者、東京大学名誉教授) *PRESIDENT Onlineからの転載
養老孟司が「景気のいい企業への就職」より「自分の財産を持て」と語る真意

alphaspirit.it -shutterstock-

<ベストセラー『バカの壁』などで知られる解剖学者の養老孟司さんが問う「なぜ苦労して大成した人が奨学金を作るのか?」...自分の過去を否定した人が陥る「歴史観の喪失」のワナ>

自分の進路はどう選ぶべきなのか。

解剖学者・養老孟司さんは「あまり今の世の中に合わせないほうがよいだろう。たとえば『景気のいい企業を選ぶ』というのはよくない」という。


 

講演録をまとめた『こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~』(扶桑社)より、一部を紹介する――。

【子育ては世の中に合わせないほうがよい】

私は解剖を専攻しましたが、東大医学部で解剖を始めたころは、解剖なんて時代遅れだという感じでした。死んだ人なんか調べて、いまさらわかることありますか、と言われました。

解剖学なんて400年も500年も歴史がありますから、玄人でもそういうふうに言っていました。今さらそんなことをやったって何もわからんでしょうと。そういう仕事をやっていましたが、一周遅れのランナーということで、おかげでずいぶん得をさせていただきました。

余計なことかもしれませんが、子どもさんをお育てになるときに、将来のことなんかお考えになるときに、あまり今の世の中に合わせないほうがよいと思います。これは大学の教師がよく言っていることですが、就職を考えるときが典型的にそうで、若い人に選ばせると、そのときに景気のいい企業に入る、これは有名な話です。

【景気のいい企業も、数十年後には不景気に】

僕が学生のころもそうでして、僕が学生のころに景気のいいところ、あったんですが、それが今になると、どうしようもない不景気なんですね。40、50年先なんてとても読めませんから。むしろ一番いいのは、どういう時代になっても人間のすることを考えてみることで、これなら大体わかる。当たり前ということはわかるので、何がつぶれて何がつぶれないか、つまり、流行りとは何かということが何となくわかってくる。

要するに、「身に付いたものが財産である」ということです。私の母は極端な人でしたが、そのことを私が医者になる前に話してくれました。

ハンス・セリエというオーストリアの医学者がいます。皆さんストレスという言葉をご存じだと思いますが、ストレスという言葉は、じつはセリエがつくったんですね。ストレス症候群という言葉をつくりました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ビジネス

三井住友トラスト、次期社長に大山氏 海外での資産運

ビジネス

台湾の11月輸出受注、39.5%増 21年4月以来
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中