最新記事
BOOKS

仕事は与えること、それで誰かが救われている──哲学を人生に生かすための1冊

2020年10月23日(金)07時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

問題が生じたら、使えない思考を捨てればいい(ジョン・デユーイ)

富増氏は、トラブルが起きた場合の哲学として、プラグマティズムの哲学者、ジョン・デユーイ(1859年~1952年)の名を挙げる。

デユーイは、思考は道具であると説く。問題が生じたら、使えない思考を捨てて、新しい思考へと切り替えればいいというのだ。

一説によると、人は恐怖や不安を感じることで、思考能力が一時的に低下し、あり得ないようなミスをしてしまう。これを防止するには、恐怖や不安を保留し、明るい思考に転換すればいい。前向きに考えることで、隠れていた恩恵が見えるようになるため、一気に挽回できる。

哲学の基本原則は、すべての存在に対立物があるため、すべてが悪いということはないのである。どんな状況においても打開できる可能性はあるという。しかし、ネガティブになると、脳が悪いことだけを選択するようになり、悪循環が起こる。

また、人は忙しくしているときは、それに集中しているが、暇になった途端にあれこれと悩み始めると富増氏は言う。そのため、よくある自己啓発での、効果的な悩みの解決方法として「とにかく忙しくすること」が挙げられるのだ。

悩みに縛られずに、日々を充実させる方法として、自己啓発手帳がある。普通のスケジュール帳と異なるのは、目標設定ページがあること。全体的な大目標(ゴール)を決めて、月単位での目標をつくり、それを達成するために週に細分化して、さらにそこから1日単位の計画を組む。

大目標を立てると、それを実現しようと、脳がオートマティックにデータを集め始める。そうしたデータを常にメモしながら行動するのである。

さらに富増氏は、手帳に哲学者の思考を図解化した「哲学コーナー」をつくることを勧めている。そうすることで、哲学者の思考を元にしながら、新しい行動計画を立てることができる。

◇ ◇ ◇

本書は4ページごとに1つの項目を立てており、興味があるページからコツコツと読んでいくだけで、人生を生き抜くための哲学思考が身につく構成となっている。

「働く気力を保つには」(マルクス)、「株か貯金か」(ケインズ)、「絶望したら」(キルケゴール)、「上機嫌でいく」(アラン)、「考えすぎをやめる」(老荘思想)......など、本書を読めば、現代を生き抜くためのヒントを賢人たちが与えてくれるだろう。


この世界を生きる哲学大全
 富増章成 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中

ワールド

世界貿易、AI導入で40%近く増加も 格差拡大のリ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中