最新記事
自動車

日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体

Betting Wrong on the Future

2026年4月12日(日)13時10分
ピーター・ニューマン(豪カーティン大学人文科学教授)、レイ・ウィルズ(西オーストラリア大学農業環境学教授)

戦略の核心は規模だ。競合をはるかにしのぐ規模でバッテリー工場やEVプラットフォームを稼働できれば、学習曲線とコスト削減が加速する。バッテリーやソフトウエア、製造プロセスの標準化によってその優位性が固定され、国外にも展開しやすくなる。

さらに、石油依存の削減や大規模な輸出などの国家目標に沿って政策、インフラ、金融を統合できる能力は大きな強みになる。中国がこの10年でバッテリーという「道路」を経済全体に張り巡らせている間、日本は流れることのない「水素の水路」の測量を続けていた。

日本の戦後の自動車やエレクトロニクス産業の成長は、長期的な産業戦略と輸出規律、政府と産業界の緊密な連携の上に築かれてきた。しかし、その構造は硬直化している。企業は合意形成と安定を重視し、失敗すると烙印を押される。内部留保は積み上がる一方で、リスクの高いイノベーションは起きにくい。

こうして内燃エンジンやハイブリッド、水素関連など既存技術への投資は続き、EVプラットフォームやソフトウエアへの本格的な投資は先送りにされてきた。その結果が、自動車産業の現状である。

2000年代から10年代にかけて、日本はBEVに大規模な投資を行う代わりに、ハイブリッド車と燃料電池車に注力した。これらの技術は革新的にみえたが、実際には既存のエンジンや燃料インフラの延命につながった。

対照的に、中国はEVとバッテリーを中核的な戦略産業と位置付け、政策、補助金、インフラ、資金を総動員している。重要なのは、試行錯誤を恐れず急速に規模を拡大させる国内企業を支援していることだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア・ウクライナ復活祭停戦、発効数時間で双方が違

ワールド

米イラン協議決裂、核・ホルムズ海峡で溝埋まらず 停

ワールド

中国、台湾向け観光規制緩和など新措置 野党党首訪中

ビジネス

円高につながる金融政策、「一つの選択肢」=赤沢経産
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 2
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由
  • 3
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 4
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中