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米ドルの「法外な特権」はどこまで続くのか

U.S. ECONOMY

2026年1月4日(日)10時00分
カーメン・ラインハート (ハーバード大学ケネディ行政大学院教授)
ILLUSTRATION FROM PROJECT SYNDICATE'S THE YEAR AHEAD 2026 MAGAZINE

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<米ドルは第2次世界大戦後、一貫して世界の準備通貨としての地位を保ってきた。その結果、アメリカは低コストで巨額の国債を発行できる「法外な特権」を享受してきた。しかし、財政赤字の拡大、インフレの高止まり、そして政治リスクの増大は、その前提を静かに揺さぶり始めている>


▼目次
トランプ政権の主張に欠ける歴史的エビデンス

多少の浮き沈みはあれど、米ドルは第2次大戦の終結以降、世界の準備通貨としての地位を一貫して維持してきた。アメリカ政府が低金利で資金を調達できるのも、各国の中央銀行や機関投資家が米国債を最も信頼できる「安全資産」と見なしているからだ。

誰もが米ドルを持ちたがるから、アメリカ政府はいくらでも国債を発行できる。この贅沢な状態を「法外な特権」と呼んだのは、1960年代フランスのバレリー・ジスカールデスタン財務相(当時)だ。しかし時がたつと、この特権ゆえにアメリカの政治家は財政規律を失い、経常収支と財政の赤字拡大に伴うリスクに鈍感になっていく。

それだけではない。2008年の世界金融危機後、通貨の番人たるFRB(連邦準備理事会)が政策金利を「長期にわたり低水準に据え置く」と発表したことで、この傾向がさらに加速していく。市場関係者が、この「長期」を「永久」と解釈したからだ。その結果、アメリカ経済の成長率が今後も政府債務の実質金利を上回り、金利も歴史的な低水準にとどまると信じるようになった。

しかしアメリカがこの「法外な特権」に安住することを、果たして諸外国は今後も許すだろうか? 外国勢による米国債の保有率は今世紀初頭の段階で発行残高の約13%だったが、13年前半には約37%にまで増えた。急成長期にあった中国が外貨準備を大幅に積み増した結果だ。しかしそれがピークで、24年末には約22%まで落ち込んでいた。

なぜか。この間に米ドルの価値が著しく下がった形跡はなく、ドル安によってドル建て資産が敬遠されたとは言い難い。むしろアメリカの財政赤字拡大と国債の新規発行の増加ペースに、外国勢の需要が追い付かなかった結果と言えよう。

むろん、まだ米国債の投げ売りで世界の資本市場が麻痺し、金融危機に陥るような状況ではない。それでも現にドル離れは進行している。

20年来のコロナ禍では米国債の需要も落ちたが、それはFRBによる大規模な量的緩和と結果的な低金利の定着がそれを補った。しかしコロナ禍が落ち着くと、今度は40年ぶりの高インフレが市場を直撃した。その結果、FRBも世界各国の中央銀行も急速な政策金利の引き上げに転じ、「長期にわたる低金利」の時代が終わった。

それでも22年前半までは、債務の返済に苦しむのは新興諸国だけで、アメリカを含む先進諸国は安泰と思われていた。しかし今は違う。米議会予算局の試算によれば、24年には国債の利払い費が対GDP比で3.1%にまで達していた。21年当時に比べると2倍以上だ。

25年4月2日にドナルド・トランプ大統領が発表した世界各国への懲罰関税と、その後の目まぐるしい政策転換によって、イギリスのEU離脱や米中貿易摩擦の激化で生じた世界貿易システムの傷は一段と深まった。もはやアメリカとの良好な貿易関係が見通せないのなら、ドル建て資産を売ってリスクの分散を図るのは当然の選択だろう。

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