最新記事
脱炭素

大規模工事不要、低コストで「脱炭素ビル」を実現...変わりゆく京都市が既存建築物のZEB化普及を後押し

2023年12月14日(木)10時45分
酒井理恵

パナソニックが連携パートナーになったのは、2023年3月、自社ビルであるパナソニック京都ビルをZEB化改修(ZEB Ready)した功績が大きい。

同ビルではLED照明のダウンサイジング、センサーによる自動制御、高COP(エネルギー消費効率)対応タイプの室外ユニット設置、AIによる空調制御など、既存の設備を省エネ性能に優れた設備にリニューアル。外皮改修などの大がかりな工事を行わず、低コストでエネルギー消費量を大きく減らすことに成功した。

パナソニック京都ビル

パナソニック京都ビル Photo: Rie Sakai

パナソニックYouTube

また、屋上や駐車場にソーラーパネルを設置するなど、エネルギー供給ができる施設として対策し、レジリエンスも兼ね備えたZEB化を実現。駐車場に設置された急速充電ステーションは、普段はEV車の充電に、停電時には非常用電源システムとして活用できる。太陽光発電システムを併設することで、災害時にも長時間の安定した電力供給を可能にする。

V2Xシステムの急速充電ステーション

V2Xシステムの急速充電ステーション。貯める・使うと相互に電力を供給できる仕組みをV2Xと呼ぶ Photo: Rie Sakai

京都市から全国に拡大する脱炭素

建築主や不動産オーナーに対し業務支援(建築・設備の設計・施工・コンサル等)を行うZEBプランナーという資格があるが、パナソニックは2019年に資格を取得。後発ながら、省エネ設備から太陽光発電、蓄電池までを手掛ける大手電機メーカーならではの強みを発揮している。

京都市内では今後、外皮改修を行わずにZEB化を達成できる見込みが高い建築物を整理した後、現地調査・図面を用いた調査により、詳細な改修手法を検討する。2024年3月には補助金の活用や建築物の所有者への提案など具体的な動きを予定しているという。

「ZEBプランナーとして、京都市で10件、全国で280件のZEB化達成を目指す。220憶円規模の需要を創造することはもちろん、脱炭素を日本全国で進めることは、パナソニックという枠を超えて非常に意義があると感じている」と、パナソニック エレクトリックワークス社の近畿電材営業部京都電材営業所所長、橋本文隆氏は展望を語る。

パナソニック エレクトリックワークス社

パナソニック エレクトリックワークス社の近畿電材営業部京都電材営業所所長、橋本文隆氏 Photo: Rie Sakai

長らく守られてきた景観条例により、大規模な建築物が少ない京都市。この古都で成功例を積み重ねることで得られる知見や技術は、今後、他の地域にも生かされる予定だ。

自治体と民間企業との協業は地域経済の活性化や行政課題解決に貢献するだけでなく、国全体のカーボンニュートラル達成の一助となることが期待されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ商務相、対米関税交渉に自信 税率10%に引き下

ワールド

イスラエル商都などにミサイル、8人死亡 イラン「新

ビジネス

午後3時のドルは144円前半、中東情勢にらみ底堅い

ビジネス

ECB、金融緩和の副作用学んだ=デギンドス副総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中