最新記事
中国経済

中国政府、GDPの76%に膨れ上がった地方政府の債務「見ぬふり」限界に 解決へ本腰か

2023年8月8日(火)11時16分
ロイター

選択肢

大半のエコノミストの予想では、中央政府は国有銀行に対し、満期を迎えた融資を、より低金利かつ長期間の融資にロールオーバーするよう指導する見通しだ。この手法は「問題を先送りし、見て見ぬふりをする」策だと言われる。

銀行は、借り換えの緊急性、重要性に鑑みてこうしたロールオーバーに応じるかどうかを選別する必要がある。債務再編は銀行自体のバランスシートを毀損(きそん)し、経済の他の分野に対する貸し出し能力を損なう恐れがあるからだ。

地方政府自体も責任を担わなければならない。アナリストによると、地方政府は昨年から持ち越した起債枠を使い、バランスシート上で「隠れ債務」を公式の債券とスワップする可能性がある。これによる起債額は最大2兆6000億元に上りそうだという。

地方政府は2015年から18年にかけてもこうした措置を講じた前例がある。

また中央政府は一部の地方政府に対し、資産の売却や資産をてこにした資金調達を要請する可能性がある。

その後は財布のひもが固い中央政府の出番になる。中央政府の債務はGDP対比わずか21%で、最も財政出動の余裕がある。

別の政策顧問は「中央政府は低コストで債券を発行し、地方債務を肩代わりすることが可能だ」と述べた。

期間10─30年の中国国債利回りは2.7─3.0%と、一部の地方やLGFVが払っている7─10%に比べて大幅に低い。

グオ教授は、効果を発揮するには、中央政府は今年こうした債務の肩代わりを1兆元以上実施する必要があると言う。

アナリストによると、極めて重要な公共サービスに資金を提供するための、より直接的な中央から地方への財政移転も選択肢に入る可能性がある。こうした措置は過去にも十分な実績があり、今年の財政移転は昨年から3.6%増えて過去最高の10兆元に達する見通しとなっている。

(Kevin Yao記者、 Samuel Shen記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドとパキスタン、即時の完全停戦で合意 米などが

ワールド

ウクライナと欧州、12日から30日の対ロ停戦で合意

ワールド

グリーンランドと自由連合協定、米政権が検討

ワールド

パキスタン、国防相が核管理会議の招集否定 インドに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 4
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 7
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中