最新記事
キャリア

40、50代こそリスキリングが必要...なのに「勉強すべき人ほど勉強しない」日本の会社員

2023年3月17日(金)17時50分
flier編集部

後藤 人間は怠惰な生き物で、追い込まれないとなかなか課題解決に本腰を入れようとしません。ヨーロッパやアメリカでは、デジタル化のためのリスキリングにとどまらず、脱炭素化に向けた人材育成として「グリーン・リスキリング」が進んでいます。特にヨーロッパのグリーン・リスキリングの本気度が違うのは、ヨーロッパの気温上昇が急速に進んでいるからです。

大賀 リスキリングに本気で取り組む企業は、「このままでは自社は立ち行かなくなる」と強い危機感を抱いているのですね。

後藤 リスキリングによる変革に成功した、ある米国企業の役員は、「社長自らリスキリングしないと退陣に追い込まれるという危機感が重要」だと語っていました。現に、AIサミットやテクノロジーの展示会には経営層がブースを熱心に回っている。テクノロジーのトレンドを知らないと自社の投資判断もできないからです。

大賀 人材育成にかける費用も欧米では日本の10倍くらい違いますよね。

後藤 日本の上場企業も人的資本の開示が義務づけられましたが、今後投資家は非財務情報として、経営層だけでなく従業員のスキルも開示を求めていくでしょう。リスキリングへの投資の有無がそこでも明らかになります。もし社長がリスキリングへの投資の重要性を理解していないのなら、理解のある会社に移るという選択肢も考えたほうがいいでしょう。そのうえで、人事担当者自らがリスキリングを実践できているか、振り返ることが大事です。

米国では毎月400万人以上の従業員が自主退職をしていますが、一番の理由が「勤め先に成長機会がないから」というものです。この動きは日本でも始まっていて、新卒社員からは「自分を成長させてくれる企業で働きたい」という声が高まっています。こうしたことから、優秀な人材の採用・雇用という意味でも、企業がリスキリングの機会を提供することは急務でしょう。

大賀 リスキリングによって事業を成功に導いた国内外の事例はありますか。

後藤 成功事例の1つは、プラスチックの包装と印刷を主力事業としていたサウジアラビアの製造企業です。同社の経営者は、SDGsに対応するためデジタルへの移行を宣言。企業内大学を立ち上げて、全従業員の6割にあたる約2000人をリスキリングしました。工場をスマートファクトリーにし、いまや製造業向けデジタル変革コンサルティングを売上の30%にまで成長させています。リスキリングによって事業のピボットに成功した好例といえるでしょう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ、金取引の規制検討 「巨額」取引がバーツ高要因

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ワールド

11月スーパー販売額前年同月比2.8%増、9カ月連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中