最新記事

インドでコメ油の需要急増、食用油不足で乗り換えも

2022年7月3日(日)14時08分
インド・アーメダバード近郊の水田で田植えをする人々

世界最大の植物油輸入国であるインドでは、世界的な供給網の混乱により生じた食用油不足を乗り切るため、原材料の「米ぬか」に注目が集まっている。アーメダバード近郊の水田で2012年7月撮影(2022年 ロイター/Amit Dave)

世界最大の植物油輸入国であるインドでは、世界的な供給網の混乱により生じた食用油不足を乗り切るため、原材料の「米ぬか」に注目が集まっている。

精米過程の副産物として生じる米ぬかは、これまで畜産や養鶏用の飼料として使われてきた。近年では製油工場でも、健康志向の強い消費者が支持するコメ油の抽出が行われるようになったが、従来は競合する食用油に比べて割高だった。

現在でも、インドにおける植物油消費全体に占めるコメ油の比率は小さい。だが、業界関係者によれば食用油の間で最も急速に伸びており、需要に応じるために生産・輸入の拡大が始まっているという。

インドネシアによるパーム油輸出の規制とウクライナからのひまわり油出荷が途絶したことで、このところ世界的に食用油価格が高騰しており、競合製品に対するコメ油の割高感はすっかり消えてしまった。これを機に、風味の特徴がひまわり油に似ているコメ油への需要は急増している。

国際米油協会(IARBO)のB・V・メータ事務総長は、ウクライナ産ひまわり油の輸入が急減する中で、消費者の間でコメ油への乗り換えが始まっている、と話す。インドは通常、国内のひまわり油需要の3分の2以上をウクライナからの輸入に頼っている。

ムンバイで暮らす主婦のアディティ・シャルマさんは、「コロナ禍を機に、健康的な食材を求めるようになった。身体に良いというコメ油を初めて使ったのは6カ月前で、それ以来、ずっと使っている」と話す。

シャルマさんは、コメ油にはコレステロール値を下げ、抗酸化作用もあるとして、「風味も良いし、健康にも良い」と話す。

現在、インドでのコメ油の価格は1トン当たり14万7000ルピー(約25万円)。これに対し、ひまわり油は17万ルピーだ。

インド溶剤抽出事業者協会(SEA)がまとめたデータによれば、コメ油は通常、他の油種に比べて25%ほど割高だが、ここ数カ月は輸入植物油よりも安くなっており、一般市民にとっても買いやすくなっている。

価格競争力を得たことで、コメ油の消費量は3月以降増大しており、事業者はコメ油生産に動きつつある。

4人家族のシャルマさんは、以前のように割高になったとしてもコメ油を買い続けるだろう、と話す。

副産物から主役へ

コメ油への需要は非常に旺盛で、精米事業者の収益構造まで変わってしまった。今や彼らは、コメ油の生産を優先している。

「精米事業者にとっては、これまで副産物にすぎなかった米ぬかが、今や主力製品になってしまった」と語るのは、国内最大のコメ油メーカーであるリセラ・グループのプニート・ゴヤル最高経営責任者(CEO)。

ゴヤルCEOは、需要増大に対応するため、現在1日600トンの精製能力を今後2カ月で1日750トンまで拡大する予定だと話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中