最新記事

ビジネス

イーロン・マスク、ツイッター買収に「謎のファミリーオフィス」を使っていた

2022年4月27日(水)17時45分
イーロン・マスク

米交流サイト(SNS)ツイッター買収を巡る攻防は、米電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏がツイッターを440億ドルで手に入れることで決着した。写真は独ベルリン近郊で、テスラの大規模工場「ギガファクトリー」の建築現場を訪れたマスク氏。Michele Tantussi-REUTERS

米交流サイト(SNS)ツイッター買収を巡る攻防は、米電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏がツイッターを440億ドルで手に入れることで決着した。ただ、マスク氏が買収手続きの窓口に指定したファミリーオフィス(自前の資産運用会社)は秘密のベールに包まれている。

テスラ以外に航空宇宙企業「スペースX」のトップなども務めるマスク氏は先に当局への届け出資料で、ツイッター買収については自身のファミリーオフィスが窓口になると明らかにした。

しかしテキサス州オースティンに拠点を置き、マスク氏の資産を管理しているこのファミリーオフィスに関しては、ほぼ何も分かっていない。

当局への届け出資料や法律関連の書類によると、ファミリーオフィスの社名はエクセッション。創設を手伝ったのは元モルガン・スタンレー社員で、何年にもわたり米金融業界との付き合い方についてマスク氏にアドバイスしてきたジャレッド・バーチャル氏だ。

バーチャル氏は1974年生まれ。2016年にモルガン・スタンレーからマスク氏のファミリーオフィスに移籍した。医療系企業「ニューラリンク」やトンネル掘削企業「ボーリング」などマスク氏が率いる他の企業でもCEOや重役を務め、マスク氏の慈善団体の取締役会メンバーも兼務する。

テキサス州会計監査当局の記録によると、バーチャル氏は2021年にはエクセッションのマネジャーとなっている。

バーチャル氏とマスク氏はコメント要請に応じなかった。

ウォートン・スクールのラファエル・アミット教授(マネジメント)によると、バーチャル氏が複数の役職を兼務しているのはファミリーオフィスのマネジャーとして異例で、マスク氏の信頼が厚いことを示している。

「ファミリーオフィスの運営を任せるということは、その人を信用しているということだ。そしてイーロンは(バーチャル氏の)権限が最大限になることを望んでいる」という。

モルガン・スタンレーは最高の資源

モルガン・スタンレーはマスク氏のツイッター買収で資金調達を主導し、助言業務も担う。マスク氏とモルガン・スタンレーが築き、バーチャル氏が支えた何年にもわたる関係が実を結んだ。

マスクがテスラの非公開化についてツイッターに投稿した問題を巡る訴訟で公開された書類によると、マスク氏がテスラの非公開化の財務アドバイザーはゴールドマン・サックスとシルバー・レイクだと投稿した翌日、バーチャル氏はマスク氏にモルガン・スタンレーを推すメッセージを送付。マスク氏はバーチャル氏の考えは公平だと返答していた。

規制の対象外

エクセッションはイアン・M・バンクス氏の人工知能を題材としたSF小説の題名。マスク氏が2015年にアイダホ州で開かれた会合でこの小説を持っている様子が目撃されている。

19年にロサンゼルスの連邦裁判所で行われた名誉棄損を巡る訴訟でマスク氏は、エクセッションは「基本的に2人で」運営されていると述べた。バーチャル氏以外のもう1人は不明。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ICJ、イスラエルにラファ攻撃停止を命令 1カ月内

ワールド

ガザ支援、ケレム・シャローム検問所から搬入 米・エ

ワールド

ゼレンスキー氏、ウクライナ大統領の正当性失う=プー

ビジネス

ダンスケ銀行とバークレイズ、ECB利下げ見通しを修
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために…

  • 10

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中