最新記事

自動車

日本のEV先進エリアは首都圏ではなく地方都市 中国のバカ売れ人気車が教える普及のカギとは

2022年2月28日(月)19時11分
山崎 明(マーケティング/ブランディングコンサルタント) *PRESIDENT Onlineからの転載
中国の田舎の若年層にバカ売れしているホンガンMINI EV

EV先進国の中国でテスラの3倍バカ売れしているホンガンMINI EV  Goldthread / YouTube


トヨタ自動車が2030年までに30車種のBEV(バッテリーEV)を展開し、350万台を販売すると発表したことを受け、日本も一気にEV普及モードになるかのような報道がある。しかし、自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏は「EV普及の真の条件は小型・軽量・低価格にある」と指摘する──。

東京の2倍以上EVが普及する「地方都市」

1月22日の日本経済新聞の1面に興味深い記事があった。日本の人口あたりのEV普及台数を見ると、地方のほうがはるかに多いという内容である。

最も多いのは岐阜県で、人口1万人あたり34.8台ということだ。東京は15.4台だから、岐阜は東京の2倍以上EVが普及していることになる。現状ではEVはガソリン車に比べかなり高価であり、所得の高い大都市部中心に売れているように思いがちだが、実体は逆なのである。

なぜこのような現象が起こるのか。その大きな要因のひとつが過疎化によるガソリンスタンドの減少らしい。

背景にある「ガソリンスタンドの減少」

ガソリンスタンドは、車の燃費向上(国交省のデータによれば、平成初期にくらべ2倍以上向上している)による需要減で都市部でも廃業が相次いでいるが、過疎地域では人口減も重なりその傾向がさらに強い。最寄りのガソリンスタンドまで15km以上離れている、という人も少なからずいるらしい。

15kmというと30分くらいかかる距離であり、ガソリンを給油するという目的のために往復1時間もかかるのはあまりに不便である。

EVを選べば就寝中に自宅で充電が可能であり、満充電で走れる距離内で運用している限りはガソリンスタンドに行く必要もなくなり、非常に利便性が高い。また、自宅での充電では電気代も安く、ガソリン車より運用コストも大幅に安くなるというメリットもある。

過疎地域の住宅なら駐車スペースは十分あるだろうし、充電設備の設置も(費用を除けば)問題ないだろう。長距離を運転することがほとんどないであろう地方の高齢者の足として、EVは理想的に思える。

都市居住者には使いにくく、コスパも悪い

一方で都市部ではどうか。都市部では集合住宅に住んでいる人が多いから、まず充電設備の問題が生じる。集合住宅の駐車場は自己所有地ではないため充電設備を設置するのは非常にハードルが高く、機械式駐車場では物理的に設置が困難だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 10
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中