最新記事

世界経済

再上昇する原油価格、歯止めかからず OPEC関係者「100ドル突破もあり得る」

2022年1月19日(水)16時55分
メルボルンの製油施設

原油価格は向こう数カ月上昇を続け、1バレル=100ドルを突破する可能性がある――。メルボルンの製油施設で2010年6月撮影(2022年 ロイター/Mick Tsikas)

原油価格は向こう数カ月上昇を続け、1バレル=100ドルを突破する可能性がある――。複数の石油輸出国機構(OPEC)高官がロイターにこうした見方を示した。需要回復と、主要産油国の増産能力が限定的なことなどが理由だ。

原油が直近で100ドル台に乗せたのは2014年。その前の2年間の平均価格は110ドルだった。そして米シェール業界の生産が急増し、主要産油国の生産競争が激しくなった14年を境に始まった長期低落局面が、新型コロナウイルスのパンデミックから世界経済が立ち直るとともに、終幕を迎えようとしているようだ。

ごく最近まで、原油が100ドル台に達する公算は非常に小さいと思われていた。ところが20年のパンデミックに伴う未曽有の規模での需要減少から市場は急速に持ち直しつつある。

需要が戻り、OPECと非加盟産油国でつくる「OPECプラス」の減産縮小は極めて慎重に行われている。このため昨年50%跳ね上がった北海ブレント価格は、足元で1バレル=87ドル近辺で推移。今年に入ってリビアなど幾つかの国で生産が滞り、オミクロン株が需要に及ぼす影響が限られていることも、今年に入って原油高が一層進んだ要因だ。

OPECは原油価格の予想や、公式に目標とする水準を公表していない。OPECプラスの閣僚や当局者も、価格が上がるか下がるか、あるいは好ましい水準についての議論にはこれまで消極的な姿勢を示してきた。

ただロイターが5人のOPEC高官に非公式な形で価格が100ドルをつけるかどうか聞いた結果、4人はその可能性を否定しなかった。残る1人はありそうにないと答えた。取材した高官の何人かは、OPECとOPECプラスの委員会に所属している。

高官の1人は「少なくとも今後2カ月間は、原油価格への圧力が増すだろう。こうした環境で、価格は100ドルに迫るかもしれないが、値動きが安定しないのは間違いない」と述べた。

OPECプラスは20年に合意した世界の全需要の10%に当たる日量1000万バレルの減産規模を、今は徐々に縮小している段階。需要の回復を受け、月間で日量40万バレルの増産を目指しているところだ。しかし多くの産油国は増産余力がなく、余力がある産油国は割り当てられた生産枠を堅持したままなので、実際の増産規模は目標より少ない。

この高官は「OPECプラスは目標水準の生産が難しい。なぜなら過去2年間で必要な投資をしてこなかった上に、オミクロン株の短期的な原油需要に対する影響が小さかったからだ」と語り、これらが原油価格を押し上げている2つの大きな材料だと付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中