持続化給付金の事業委託めぐる疑惑、野党追及 2次補正分も同法人の可能性

新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事業委託について、一部野党が不透明だと問題視し、政府が説明を迫られる事態となっている。写真は国会議事堂。2016年7月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)
新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事業委託について、一部野党が不透明だと問題視し、政府が説明を迫られる事態となっている。持続化給付金事業は、8日から国会審議が始まる第2次補正予算にも計上されており、事務委託費の上限は850億円。事業の継続性から「(1次補正と同じ)一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に発注することが「現実的」(政府関係者)との声が強いものの、国会での追及は強まりそうだ。
応募は2社、入札に疑念も
持続化給付金事業は、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小企業等の法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に現金を給付する制度。1次補正予算では150万件に給付することを前提に2兆3176億円の予算が確保された。事務委託費は769億円で「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が受託。受注金額の97%にあたる749億円で電通<4324.T>に再委託している。
4月8日の競争入札公示前に同協議会が理事会で入札を決めていたことなどが分かっており、「入札」が形だけのものだったのではないかとの疑念が持たれている。この時の入札には、同協議会を含め2社が応札している。経産省関係者は、例のない規模の給付金事業で、早期に給付することが求められる中、4月2・3日に事前ヒアリングという形で話を聞いていたことも認めている。
迅速な給付必要、「協議会」にはノウハウ
経産省によると、今回の案件では、膨大になる給付金をいかに早く届けるか、いかに効率的に行うかという仕事が求められていた。過去に補助金支給などの業務を行ったことのある同協議会には、審査のための人員がどの程度必要になるか、サポートセンターは何カ所くらい設置すればよいかなどの点で、それなりのノウハウがあったという。受託した企業は、企画や工程管理、振込業務といった「コア業務」の遂行と「責任」を負うことになる。
電通自身はこの案件に直接応札していない。上場企業である電通に、まとまった規模の給付金が預かり金の形で出入りすると、投資家からみて、非常に不自然な形になるという説明を、電通が行っているという。
同協議会からの再委託に対し、電通グループの広報担当者は「国のガイドラインを順守した合法的な受託業務であり、業務完了後には、事業実績を取りまとめ報告し、それが認められた段階で初めて精算が行われる」とコメントしている。
サービスデザイン推進協議会
「サービスデザイン推進協議会」は2016年5月16日に電通、パソナグループ <2168.T>、トランス・コスモス<9715.T>によって設立された。設立日したその日に公募が開始された経産省の「おもてなし規格認証事業」の一般競争入札に応募、落札した。この事業は、電通と電通国際情報サービスに外注している。また、同年には「IT補助金事業」も受託。これは、電通、電通ワークス、みずほ銀、NTTデータ、一般社団法人情報サービス産業協会に外注している。
同協議会は、法律で義務付けられた決算公告を、設立後一度も行っていなかったことも明らかになっている。梶山弘志経産相は5日、「法令にのっとった開示が行われていなかったことは大変遺憾。早急な対応を要請している」と述べている。