最新記事

日本政治

持続化給付金の事業委託めぐる疑惑、野党追及 2次補正分も同法人の可能性

2020年6月5日(金)20時16分

新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事業委託について、一部野党が不透明だと問題視し、政府が説明を迫られる事態となっている。写真は国会議事堂。2016年7月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事業委託について、一部野党が不透明だと問題視し、政府が説明を迫られる事態となっている。持続化給付金事業は、8日から国会審議が始まる第2次補正予算にも計上されており、事務委託費の上限は850億円。事業の継続性から「(1次補正と同じ)一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に発注することが「現実的」(政府関係者)との声が強いものの、国会での追及は強まりそうだ。

応募は2社、入札に疑念も

持続化給付金事業は、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小企業等の法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に現金を給付する制度。1次補正予算では150万件に給付することを前提に2兆3176億円の予算が確保された。事務委託費は769億円で「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が受託。受注金額の97%にあたる749億円で電通<4324.T>に再委託している。 

4月8日の競争入札公示前に同協議会が理事会で入札を決めていたことなどが分かっており、「入札」が形だけのものだったのではないかとの疑念が持たれている。この時の入札には、同協議会を含め2社が応札している。経産省関係者は、例のない規模の給付金事業で、早期に給付することが求められる中、4月2・3日に事前ヒアリングという形で話を聞いていたことも認めている。 

迅速な給付必要、「協議会」にはノウハウ

経産省によると、今回の案件では、膨大になる給付金をいかに早く届けるか、いかに効率的に行うかという仕事が求められていた。過去に補助金支給などの業務を行ったことのある同協議会には、審査のための人員がどの程度必要になるか、サポートセンターは何カ所くらい設置すればよいかなどの点で、それなりのノウハウがあったという。受託した企業は、企画や工程管理、振込業務といった「コア業務」の遂行と「責任」を負うことになる。

電通自身はこの案件に直接応札していない。上場企業である電通に、まとまった規模の給付金が預かり金の形で出入りすると、投資家からみて、非常に不自然な形になるという説明を、電通が行っているという。

同協議会からの再委託に対し、電通グループの広報担当者は「国のガイドラインを順守した合法的な受託業務であり、業務完了後には、事業実績を取りまとめ報告し、それが認められた段階で初めて精算が行われる」とコメントしている。

サービスデザイン推進協議会

「サービスデザイン推進協議会」は2016年5月16日に電通、パソナグループ <2168.T>、トランス・コスモス<9715.T>によって設立された。設立日したその日に公募が開始された経産省の「おもてなし規格認証事業」の一般競争入札に応募、落札した。この事業は、電通と電通国際情報サービスに外注している。また、同年には「IT補助金事業」も受託。これは、電通、電通ワークス、みずほ銀、NTTデータ、一般社団法人情報サービス産業協会に外注している。

同協議会は、法律で義務付けられた決算公告を、設立後一度も行っていなかったことも明らかになっている。梶山弘志経産相は5日、「法令にのっとった開示が行われていなかったことは大変遺憾。早急な対応を要請している」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「北朝鮮問題は解決可能」、金正恩氏と良好

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦「1週間以内に実現可能」

ワールド

イラン、IAEAの核施設視察を拒否の可能性 アラグ

ワールド

「トランプ氏の希望に応じる」、FRB議長後任報道巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中