最新記事

パンデミック

クラスター続発で行き先失ったクルーズ船 今はマニラ湾で「巣ごもり」停泊

2020年5月19日(火)12時30分

ここ数週間、フィリピンのマニラ湾は世界最大の「駐船場」になっている。クルーだけが乗り、フィリピン当局による新型コロナウイルスの検疫を受けている。写真は5月8日、マニラで撮影(2020年 ロイター/Eloisa Lopez)

ここ数週間、フィリピンのマニラ湾は世界最大の「駐船場」になっている。停泊しているのは大量のクルーズ船。客は一人も乗っていない。

船の数は20隻以上、その総重量は200万トンにもなる。客船には総勢5300人以上のフィリピン人スタッフが乗ったまま。再びクルーズ船の仕事にありつけるかわからない中で、新型コロナウイルス制限措置の隔離期間が終わるのを待っている。

新型コロナウイルスの影響で飛行機は減便、渡航は制限された。複数の客船で集団感染が起きたこともあり、クルーズ船業界は事実上の停止状態にある。運航会社は、数百人のクルーを乗せたまま巨大な客船を停泊できる場所を世界中に確保しつつある。

5000件近いウイルス検査をするために客船間を行き交うフィリピンの沿岸警備隊によると、今後も船団の規模は膨らむ予定だという。フィリピンに戻ってきたクルーの隔離期間は14日。これまでに感染が疑われるケースは報告されていない。

フィリピンの国際海事協会のトップを務めるホゼ・アルバ―・カトー氏は、サッカー場を縦に2つ3つつなげたくらいの長さがあるクルーズ船が、大挙してマニラ沖にいることに特に驚きはないと語る。

クルーズ船の乗員はフィリピン国籍が多く、マニラ湾に客船が集結するのは合理的だという。

カトー氏はロイターに対し、「(1隻につき)乗員の30─40%がフィリピン人だ。ここで待てば、船の所有者はかなりコストを抑えられる」と語った。

クルーたちはロイターの取材に対し、退屈している、寂しい、すぐ近くにある家に帰れないことに苛立ちが募ると明かしたが、それでも快適な部屋で過ごせることを幸運に思っていると語った。ほかの場所で隔離期間を過ごすフィリピン人帰国者が、もっと過酷な環境に置かれていることを知っているからだ。

航海中なら自分が掃除する部屋で寝泊まりしているマイケルさんは、「みんなそれぞれスイートルームをあてがわれているんだ。まるでお客さんになったみたいだよ」とおどけてみせた。

ビデオチャットで取材に応じたマイケルさんは、「ここにいる方が安全だと感じる。清潔さと衛生において、クルーズ船の基準は高い」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FRB理事にミラン氏、米上院が僅差で承認

ワールド

ロシアの凍結資産を奪う国の責任追及=メドベージェフ

ワールド

ロシア・ベラルーシ合同軍事演習、米軍将校が視察

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が判断
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中