最新記事

米中貿易戦争

米中貿易、ほぼ全面的な関税が「ニューノーマル」の恐れ

2019年10月18日(金)09時28分

米中貿易戦争が始まるまでは、世界経済の前途は非常に明るかった。17年終盤といえば、トランプ政権が投資促進や成長てこ入れのための包括的な減税を実施する直前で、欧州は金融危機後の低迷から脱却し、中国経済は減速しながらも底堅かった。

国際通貨基金(IMF)は17年10月、18年の世界経済成長率が3.7%に達すると予想していた。

ところが貿易戦争開始以降、中国は商用機を除くほとんどの米国からの輸入品、計1100億ドル相当に関税を課している。米国は年間約5500億ドルとなる中国からの輸入品のうちおよそ3750億ドルに関税を発動した。

そのため、IMFのゲオルギエワ新専務理事は今月、貿易摩擦によって世界経済が「同時的な減速」に陥ったと警告するとともに、主に投資を冷え込ませたり市場に打撃を与える不確実性を通じて、これまでに発表された関税が世界総生産を7000億ドル分下押ししたと述べた。[nL3N26T4G3]

米連邦準備理事会(FRB)も同様に、貿易摩擦で世界総生産は8500億ドル、1%相当が失われつつあるとの見通しを示している。

逆に今回の部分合意で、トランプ政権が15日に予定していた中国向け制裁関税引き上げの見送りは、世界総生産へのマイナス効果を0.1%ポイント和らげるに過ぎない、とオクスフォード・エコノミクスは試算した。

ブルッキングス研究所の中国専門家デービッド・ダラー氏は「(トランプ政権は)他の関税を維持することで中国に対して強硬的で、決して屈しないと主張できる。さらなる話し合いや中国市場の開放に向けた展望はそれほど大きくないように思われる」と話した。

(Heather Timmons記者、David Lawder記者)

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ

ビジネス

英中銀総裁「AIバブルの可能性」、株価調整リスクを

ビジネス

シカゴ連銀公表の米失業率、10月概算値は4.4% 

ワールド

米民主党ペロシ議員が政界引退へ 女性初の米下院議長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    ファン熱狂も「マジで削除して」と娘は赤面...マライ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中