中国は、トランプ米政権が中国製品に追加関税を課している報復手段として、保有する米国債を大量に売却するのではないか──。金融市場ではこうした懸念がくすぶり続けている。

しばしば「核オプション」と評されるように、中国による米国債の大規模な売りは世界中の金融市場を不安定化させ、金利を押し上げるとともに、米中関係を未踏の領域へ突入させてしまうだろう。

ただ中国がここしばらく米国債の保有量を減らしてきているとはいえ、猛烈な保有圧縮に動く公算は極めて乏しい、と大半の専門家はみている。中国政府が米国債の大量放出を真剣に考えている形跡は見当たらない。

中国の米国債保有を巡るいくつかの重要なポイントを以下に記した。

●米国債保有高

およそ10年前、中国は日本に代わって外国として世界最大の米国債保有国になった。米財務省のデータでは、3月末の保有高は1兆1200億ドル強。第2位の日本は1兆0800億ドル近くだった。

中国の保有高が1兆3200億ドルに迫ってピークに達したのは2013年終盤。それ以降に約15%減少し、3月の保有高は2年余りぶりの低水準だった。

米国債発行残高に占める中国の保有比率という面では、さらに急速に下がっている。米政府が膨らむ一方の財政赤字の手当てのために着実に国債増発を続けているからだ。

現在の米国債発行残高16兆1800億ドルに対する中国の保有比率は7%前後で、2011年のピークの14%を大きく下回り、14年来の最低になった。もっとも中国よりも保有比率が大きいのは13.5%の米連邦準備理事会(FRB)だけで、保有高は2兆1500億ドルに上る。

米国債は2017年12月の大規模減税を受けて発行が加速し続ける見通しのため、中国の保有比率は一段と下がりそうだ。

●なぜ中国はこれほど米国債を持つのか

中国は米国とその他地域向けの純輸出国として、3兆ドルを超える世界最大の外貨準備を保有している。その大半は1990年代初頭以来の一貫した対米貿易黒字を通じてドル建てで蓄積された。

これらのドル準備を世界一安全で圧倒的に市場規模が大きく、流動性が高い米国債に振り向けるのは自然だ。2007─09年の金融危機以来、日本やドイツなど他の主要先進国の国債よりも、米国債の利回りがずっと高いことも魅力になっている。

大量売却、米中それぞれのリスクは?