最新記事

貿易戦争

「世界最大の保有国」中国は米国債を売却するか? 対米報復の現実度

2019年5月31日(金)11時07分

中国は、トランプ米政権が中国製品に追加関税を課している報復手段として、保有する米国債を大量に売却するのではないか──。金融市場ではこうした懸念がくすぶり続けている。2020年撮影(2019年 ロイター/Lee Jae-won)

中国は、トランプ米政権が中国製品に追加関税を課している報復手段として、保有する米国債を大量に売却するのではないか──。金融市場ではこうした懸念がくすぶり続けている。

しばしば「核オプション」と評されるように、中国による米国債の大規模な売りは世界中の金融市場を不安定化させ、金利を押し上げるとともに、米中関係を未踏の領域へ突入させてしまうだろう。

ただ中国がここしばらく米国債の保有量を減らしてきているとはいえ、猛烈な保有圧縮に動く公算は極めて乏しい、と大半の専門家はみている。中国政府が米国債の大量放出を真剣に考えている形跡は見当たらない。

中国の米国債保有を巡るいくつかの重要なポイントを以下に記した。

●米国債保有高

およそ10年前、中国は日本に代わって外国として世界最大の米国債保有国になった。米財務省のデータでは、3月末の保有高は1兆1200億ドル強。第2位の日本は1兆0800億ドル近くだった。

中国の保有高が1兆3200億ドルに迫ってピークに達したのは2013年終盤。それ以降に約15%減少し、3月の保有高は2年余りぶりの低水準だった。

米国債発行残高に占める中国の保有比率という面では、さらに急速に下がっている。米政府が膨らむ一方の財政赤字の手当てのために着実に国債増発を続けているからだ。

現在の米国債発行残高16兆1800億ドルに対する中国の保有比率は7%前後で、2011年のピークの14%を大きく下回り、14年来の最低になった。もっとも中国よりも保有比率が大きいのは13.5%の米連邦準備理事会(FRB)だけで、保有高は2兆1500億ドルに上る。

米国債は2017年12月の大規模減税を受けて発行が加速し続ける見通しのため、中国の保有比率は一段と下がりそうだ。

●なぜ中国はこれほど米国債を持つのか

中国は米国とその他地域向けの純輸出国として、3兆ドルを超える世界最大の外貨準備を保有している。その大半は1990年代初頭以来の一貫した対米貿易黒字を通じてドル建てで蓄積された。

これらのドル準備を世界一安全で圧倒的に市場規模が大きく、流動性が高い米国債に振り向けるのは自然だ。2007─09年の金融危機以来、日本やドイツなど他の主要先進国の国債よりも、米国債の利回りがずっと高いことも魅力になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ251ドル安 米銀大手トッ

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4カ月ぶり高値 米の

ワールド

米大統領、食料支援「政府再開までない」 人権団体は

ワールド

米IBM、第4四半期に人員削減 数千人規模の可能性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中