最新記事

経営

あのP&Gですら、生き延びるためにグーグルの力を借りた

2019年2月19日(火)12時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

チューリッヒにあるグーグルのヨーロッパ技術センター Arnd Wiegmann-REUTERS

<古い企業は「化石」になり、ベンチャーは7割が倒産する。競争が激化し「パニック状態」が広がる時代に生き残る一流企業は、新興企業とのパートナーシップによって「若返り」を成功させている>

日本には創業100年を超える「百年企業」が3万社以上あり、人間だけでなく企業も長生きする長寿大国だ。そうした伝統企業は長年培ってきた技術や知恵が強みとなるが、決断のスピードが遅く、新規性に乏しいという老舗ならではの弱点もある。

その一方で、一説には創業から3年以内に7割が倒産すると言われるように、新興企業にとっては素早くビジネスを拡大し、安定した経営基盤に乗せることが大きな課題となっている。

だが、どんな企業であれ、全て独力で歩む必要などない。既存企業と新興企業が手を組めば、双方に多大な恩恵をもたらす「ウィン・ウィン」の関係を築ける――そう語るのは、元P&Gのマーケティング責任者で、企業のブランド構築において世界的な名声を誇るジム・ステンゲルだ。

前著『本当のブランド理念について語ろう』(CCCメディアハウス)ではビジネスを加速する理念の法則を説いたステンゲルが、最新著書で扱うのはそうした関係の築き方。『会社は何度でも甦る――ビジネス・エコシステムを循環させた大企業たち』(池村千秋・訳、CCCメディアハウス)で、元気な新興企業とのパートナーシップによって「若返り」を成功させた一流企業を例に取り、それを実現するための方法を具体的に解説している。

P&Gとグーグルが出合ったら...

著者のジム・ステンゲルは、世界最大の消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に25年間在籍。パンパースなど数々のブランドを「消費者がボス」の視点から再生させて、ブランド王国としての同社の地位を確固たるものにした伝説のマーケターだ。

同社のグローバル・マーケティング責任者として年間80億ドルの広告費を動かし、収益を倍増させた実績を持つ。2011年にはフォーチュン誌の「ドリーム・マネジメント・チーム」の最高マーケティング責任者に選出されている。

P&G在籍当時、成長著しいグーグルが既存企業との関係構築に熱心であることを見て、その逆の関係も成り立つではないかと考えたという。P&Gのような大手の成熟企業が今後も生き延びるためには、新興企業の力を借りるべきだと気づいたのだ。

そこでP&Gは、グーグルと短期の人事交流を行った。複数の有力ブランドのリーダーたちを1カ月にわたってグーグルに派遣し、グーグルからは、広告セールス部門の社員がP&Gにやって来た。

この人事交流によって、P&Gは、グーグル社員たちの助言を基にオンラインマーケティングを本格的に実践する検討を始め、グーグルはP&Gのブランドマネジメントの実務を学んだことで、組織体制を見直すことになったという。

新しいものを創造する意欲に満ちた新興企業が既存企業に刺激を与えた一方で、経験豊富な既存企業は、その知恵を新興企業に授けることができたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中