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米経済

中間選挙後の米国経済の行方 注意が必要な先行きのリスク要因とは

2018年11月13日(火)07時10分
真壁昭夫(法政大学大学院教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

実質GDP成長率が潜在成長率を上回る状況が続くという点で、当面の米国経済は好調さを維持すると考えられる。中間選挙という不確定要素がなくなり、市場参加者はリスクを取りやすくなるだろう。それは、株価上昇などにつながり、消費者心理を下支えする可能性がある。

金利上昇から住宅投資や自動車販売は軟調だが、一般消費財やサービスを中心に個人の消費意欲は旺盛だ。10月の時間当たり平均賃金は前年同月比で3.1%増加した。時間当たり平均賃金の増加率が3%を上回るのは2009年4月以来だ。本年の年末商戦に関しても昨年以上の盛り上がりを期待する企業経営者は多い。米国経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズは良好な状態にあると評価でき、しばらくはこの状況が続きそうだ。

限界が見え始めた有力IT企業の成長力

足元の企業決算を見ていると、先行きのリスク要因は明らかに増えている。特に、米国経済と株価上昇を支えた「GAFA」の成長期待が低下していることは見逃せない。

2016年から本年夏場まで、ITハイテク銘柄の多いナスダック総合指数は50%超の上昇を遂げた。同じ期間、S&P500指数の上昇率は40%弱、世界全体(先進国と新興国)の株価の平均的な上昇率は20%台半ばだった。GAFAを中心とするIT先端企業が米国経済の成長の原動力の一つとなり、それが世界経済全体の安定感を支えたと言える。

重要なことは、GAFAが「イノベーション」を発揮してきたことだ。イノベーションとは端的に、多くの人が欲しいと思わずにはいられないヒット商品などを生み出すことだ。スマートフォンはその一つだ。それがフェイスブックなどのSNS(インターネット交流サイト)プラットフォーマーの成長を支え、世界各国でのIoT(モノのインターネット化)への取り組みをも支えてきた。

しかし、GAFAのイノベーションには陰りが見え始めている。フェイスブックはデータ不正流出からユーザーの減少に直面している。それは広告収入の減少に直結する。同社は人海戦術で偽アカウントやフェイクニュースを摘発しており、コストが増加している。GAFAをはじめとするIT先端企業は、英国が導入を予定するデジタル課税にも対応していかなければならない。GAFAが従来の増益ペースを維持することは難しいだろう。

また、アップルは価格競争に直面している。価格帯の高いiPhone(アイフォーン)の新型モデルがシェアを獲得することは難しい状況だ。アップルが生産を委託する台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)などに増産中止を求めたとの報道がなされたことを見ても、アイフォーンへの人気は低下している。それはアップルの業績悪化要因だ。

GAFAの中でもアマゾンの成長期待は相対的に高いと言える。なぜなら、同社はデータの活用だけでなく、ネットワークテクノロジーを用いた物流革命などを重視しているからだ。問題は、アマゾンの株価が割高なことだ。海外事業の成長ペースも鈍化している。従来に比べ、今後の成長見通しに関する不透明感は高まっている。

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