最新記事
ブランド

米国発祥「フォーエバー21」日本1号店はなぜ閉店したのか

2017年11月10日(金)20時29分
真城愛弓(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

10月15日の日曜日。閉店を迎えたフォーエバー21原宿店の入り口では「1点買うと2点目無料」というキャンペーンが告知されていた(写真:記者撮影)

秋雨が降りしきり肌寒かった10月15日の日曜日。東京・原宿の明治通り沿いを、傘を差した多くの若者が行き交っていた。そんな中、米国発祥のファストファッションブランド「フォーエバー21」の国内1号店がひっそりと閉店した。

その日、原宿店ではセール商品を1点買うともう1点が無料になるキャンペーンが行われていた。ただ、「閉店セール」と大々的にアピールしているわけではなかった。店の入り口付近に「これまで大変多くのお客様にご来店いただきましたこと、スタッフ一同心から感謝申し上げます」と書かれた張り紙があっただけ。セール商品が陳列された1階にはそれなりの客入りがあったものの、閉店を知って訪れた人はわずかな様子だった。

閉店日に訪れた30代の女性は「今は安くてデザインのいい服がネットですぐに買える。わざわざフォーエバー21に買い物に行くことはなくなった」と淡々と語った。

原宿の客層と合っていなかった

フォーエバー21が原宿店を開業したのは2009年4月のこと。当時は「ロサンゼルス発の低価格ファッションが日本に上陸する」と、若い女性の間で大きな話題になった。

開店当日は約2000人が店舗前で長蛇の列を成し、テレビ局など各メディアが開店の様子を一斉に報道。初年度の売上高は約100億円に達した。

toyokeizai171110-2.jpg

2009年4月の原宿店オープン日は多くの報道陣と客でにぎわった(撮影:田所千代美)

華やかだった開店から8年半。原宿の一等地にあったにもかかわらず、なぜ1号店は閉店に追い込まれたのか。理由の1つが、フォーエバー21の客層と原宿エリアの客層が合致しなかったことだ。同ブランドの日本進出に携わったR・B・Kリテールビジネス研究所の飯嶋薫代表取締役は、「米国でのフォーエバー21の平均顧客年齢は30代半ば。それと比べ、原宿の客層は若すぎた」と指摘する。

実際、原宿店から最も近い渋谷店に足を運ぶと、店内では20代後半~30代の女性や、子育て世代、外国人客の多さが目についた。一方、「若者の街」として知られ、竹下通りなどが有名な原宿エリアの客層は10代の小中高校生がメインで、フォーエバー21の顧客層とは隔たりがあった。こうした状況に鑑みると売り上げは苦戦していたとみられる。

それだけではない。原宿店は、H&Mやラフォーレ原宿が並ぶ明治通り沿いの一等地に建つ。地下1階から地上4階まで計5フロア、500坪を超える大型店だった。ある業界関係者は「売上高が当初の勢いを失ってくるにつれ、高額な家賃の負担が厳しくなっていったのだろう」と話す。

toyokeizai171110-3.jpg

閉店した原宿店は、5フロアのうち男性向けは1フロアのみだった(記者撮影)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:政策パスで日銀「布石」の思惑、タカ派利上

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ビジネス

イケア、米国内の工場から調達拡大へ 関税で輸入コス

ビジネス

金融政策で金利差縮めていってもらいたい=円安巡り小
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中