最新記事

健康産業

ドラッグストア「禁煙」の英断

健康が売り物のチェーン店として、売り上げの大きなたばこも捨てる決断に業界は大揺れ

2014年2月21日(金)13時05分
クリストファー・ザラ

激震 CVSの陳列棚からはもうすぐたばこが消える Carlo Allegri-Reuters

 先週、アメリカのドラッグストアチェーン第2位のCVSが全米の店舗でたばこの販売を停止すると発表した。このニュースが報じられると、すぐに業界最大手のウォルグリーンに対して消費者から厳しい目が向けられた。

 医療関係者はこの数年、健康に有害な恐れがある商品の販売を控えるよう小売業者やドラッグストアに圧力をかけてきた。米国肺協会は、今年10月1日までに関連商品も含めてたばこの販売を終了すると発表したCVSの決定を「公衆衛生を向上させる英断」と称賛している。

 CVSの決断により、ウォルグリーンは微妙な立場に立たされることになった。同社は08年、サンフランシスコで可決されたドラッグストアでのたばこ販売を禁じる条例は違憲だとして訴訟を起こした。スーパーでは販売が認められるのに対して、ドラッグストアだけ規制の対象となるのは差別だと主張した。

 ウォルグリーンのフェイスブックページには、8500以上ある店舗でのたばこ販売を取りやめてほしい、要望が聞き入れられなければ今後はCVSで買い物してやる、という脅しめいたコメントが書き込まれた。ツイッターには「#CVSたばこ販売停止」というハッシュタグまで登場し、SNSにはウォルグリーンもCVSに倣うべきだという声があふれた。

 ウォルグリーンの広報は、CVSの後を追うかどうかについては言及を避け、メールで声明を発表した。「当社は、顧客に期待される商品の品ぞろえと健康志向のニーズにバランスよく応えるために、この商品分野の取り扱いを検討してきた。今後も検討を重ねる一方、顧客に対する啓蒙と、たばこの需要量を減らす助けとなる禁煙グッズや代替品の提供を行っていく」

 これまで積極的にたばこ販売の権利を訴えてきた態度を一転させるようなウォルグリーンによる今回の声明発表を、詭弁だと受け取る消費者もいるかもしれない。いずれにしても、同社が世論の圧力に屈するのは時間の問題と思われるが。

[2014年2月18日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中