最新記事

新商品

100日間洗わなくていいシャツの秘密

臭いが付きにくく、シワになりにくいウール素材を使った新発想のシャツが洗濯嫌いの若い男性に大受け

2013年6月4日(火)15時33分
クレア・スターン

うれしい驚き 木綿に比べて長持ちするのもウールの利点 Tina Chou

 若い男性は大抵、ワイシャツを洗濯してアイロンをかける手間を嫌うもの。ニューヨークに住む24歳のマック・ビショップもそんな1人だった。

 ただし、彼はただの「洗濯嫌い」には終わらなかった。有望なベンチャーの立ち上げ資金を不特定多数の人から募るサイト「キックスターター」を利用して、ウール&プリンス社を起業したのだ。売りは洗濯いらずのシャツ。洗わなくても、10〜50回は続けて着られるという。

 その秘訣は社名にあるとおり、シャツの素材にウールを使ったことにある。といっても、冬に着るセーターのようなチクチク感とは無縁だ。

 その一方、ウール本来の長所は生かされている。臭いが付きにくくてシワになりにくく、男性用ワイシャツの素材として最も一般的な綿より長持ちするという特徴だ。

 ブランドを立ち上げるずっと前から、ビショップの頭にはウールの存在があった。彼はアメリカを代表する老舗ウールメーカー、ペンドルトンの経営者一族の出身なのだ(ただしウール&プリンスのシャツは中国製)。

ジーンズにヒントを得て

 ウールを使うアイデアは、男性の「ジーンズ好き」にヒントを得たものだ。デニムと同様、ウールも頻繁に洗濯する必要がないから、フランスのファッションブランドA.P.C.(アー・ペー・セー)の「洗わなくていいデニム」のファン層にアピールするはずだ、とビショップは考えた。キックスターターのサイトにあるウール&プリンスの紹介ページでは、シャツの洗濯法について「どうしても洗濯が必要になったら、ドライクリーニングするか、優しく洗うこと」とある。

 ウール製シャツの「持続力」を試すため、ビショップは自ら実験を行った。ペンドルトン製のシャツを改良したものを、洗濯せずに100日間連続で着用。結果は、100日後でも「かなりいい状態」だった。

 とはいえ、他の人にも同じことを勧めているわけではない。「自動洗浄できるシャツを作りたいんじゃない」と、彼は言う。「でも綿より長持ちするウールのシャツが、男性たちにとってうれしい驚きになることは強く確信している」

 ウール&プリンスのシャツは1枚98ドル。2枚で190ドル、3枚なら280ドルだ。同社のサイトで購入できるが、初回の発売は限定3000枚で、既に完売した。

 同社はTシャツやポロシャツ、靴下や下着まで、さまざまなウール製品の開発を進めており、シャツの追加注文を受ける前にキックスターター上でさらなる支援者の獲得を目指している。「この15年間で織物技術や紡績技術が向上し、ファッションデザイナーがウール素材をより有効に活用できるようになりつつある」と、ビショップは言う。

 多くのメディアに「洗濯不要のシャツ」と紹介されたことで、この数週間で同社の評判は一気に広まった。4月22日にキックスターターで取り上げられて以来、出資を申し出たのは、先週の時点で2300人以上。当初の目標の3万ドルを大幅に上回る約31万4000ドルの資金が集まっている。

 ワイシャツの洗濯やアイロンがけを面倒だと思う人が大勢いる限り、この数字はまだまだ増えそうだ。

[2013年6月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの

ビジネス

クーグラー元FRB理事、辞任前に倫理規定に抵触する
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中