最新記事

欧州債務危機

小国キプロスがユーロ圏の命運を握る理由

経済は小規模だが、救済に失敗すれば欧州全域が道連れになる恐れも

2013年2月25日(月)17時07分
マシュー・メルキオーレ

最大の争点 2月24日のキプロス大統領選の決選投票で最有力候補だった民主運動党のアナスタシアディス党首(ポスター中央)は、支援受け入れの早期合意を主張していたが Yorgos Karahalis-Reuters

 地中海の島国キプロスがEUなどに金融支援を求めている。支援額は170億ユーロとみられ、ギリシャやスペインへの大型融資に比べれば「はした金」。だが「経済が小規模だから救済してもしなくてもユーロの安定性に関係ない」との油断は、新たな危機の呼び水になりかねない。

 ギリシャも当初はユーロ圏に占めるGDPの割合がわずか2・6%の小国だ、という理由で軽視されていた。だがギリシャ財政への懸念はスペインやポルトガルにも飛び火し、欧州全域に債務危機を引き起こした。

 同じ意味でキプロスの動向も重要な意味を持つ。EUがキプロスを救済し、危機の連鎖を食い止めるべきなのは間違いない。

 ただし支援の方法には一考の余地がある。膨大な政府債務が元凶だったギリシャに対し、キプロスは銀行の不良債権問題が根底にある点でアイルランドに似ている。破綻寸前の銀行に公的資金を注入して財政難に陥ったアイルランドに、EUは巨額の支援を提供した。

 だが同国の公的債務は膨れ上がり、国民は長期の緊縮財政に苦しんでいる。やみくもな銀行救済を支えたために痛みを長引かせた失敗を、キプロスで繰り返すべきではない。

From GlobalPost.com特約

[2013年2月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中