最新記事

新興国

BRICS「俺たちにはカネがある」

首脳会議で新興国の地位向上と国際社会の「民主化」を訴えたが、目立ったのは中国のご都合主義ばかり

2011年4月15日(金)17時10分
キャサリーン・E・マクラフリン

呉越同舟? インド、ロシア、中国、ブラジル、南アフリカの首脳が目指す先は Ed Jones-Pool-Reuters

 経済的に成長した世界の5大新興国は世界に向けてメッセージを発している――われわれにはカネがある。そして、それに見合う影響力を持つべきだ、と。

 熱帯リゾートの中国海南省三亜で今週開催されたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、そして新たに加わった南アフリカ)の首脳会議で、リーダーたちは国際問題、特に経済分野において発言力を強めるための方策を議論した。

 会議の共同声明で興味深かったのは、5カ国の首脳が、「国際関係における民主主義を推進すべき。そして、国際問題における新興国と途上国の発言力をもっと認めるべきだ」と宣言したことだ。

 会議が終わるにあたり、BRICSの首脳たちはロシアの宇宙飛行50周年への祝福からテロに対する非難まで、32にわたる宣言を発表した。

 だが会議の大半の時間は、自分たちのカネと影響力にふさわしい発言力を求めることに費やされた。特にBRICSの首脳たち要求したのが世界的な通貨体制の見直しだ(ただ彼らはドルについては明確には触れなかった)。

会議から「消えた」人民元問題

「現在の国際通貨・金融システムには明らかに不備や欠如がある。われわれは安定的で確実性のある広域的な国際準備通貨制度に基づく世界の通貨体制改革を支持する」と、彼らは宣言した。

 ただIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)通貨バスケットに中国の人民元を含めることについて、BRICSの首脳陣は言及しなかった。実際のところ、人民元について触れられることはまったくなかった。賛否両論ある中国の通貨問題が、まるで首脳会議のテーブルから消えてしまったかのようだった(中国政府は最近南京で開催された為替問題に関するG20の会議の冒頭でも、人民元について議論しないよう要求した)。

 通貨以外の問題でBRICSの首脳たちが繰り返し語ったのは、自分たちにパワーがあることは間違いない、ということだった。彼ら5カ国で、世界人口の40%、世界全体のGDPの18%を占め、どの国も急速に成長している。5カ国とも国連安全保障理事会のメンバーだ。

 ただ何人かの首脳はG20やIMFのような現存する枠組みを変えようとしているのではない、と強調した。彼らが求めているのはこういった現在の枠組みの中での発言力の強化だ。「BRICSは何かに反対するための組織ではない。実際、われわれは協力的だ」と、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は語った。「協力関係を基にした結束を目指す組織だ。われわれの行動はほかのいかなる組織ともあつれきを生じない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、25年レアアース生産枠を公式発表なく各社に通

ワールド

石破首相、米財務長官と会談 関税協議継続を要請

ワールド

シリア政府、南部スワイダへの部隊再配置を否定

ワールド

EU、対ロ制裁第18弾で合意 原油価格の上限引き下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中