最新記事

アメリカ経済

オバマの新経済アドバイザーはこんな男

大統領経済諮問委員会(CEA)のトップになるオースタン・グールズビーの意外な特技と、彼を指名したオバマの思惑とは

2010年9月13日(月)14時43分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

長年の友人 難しい時期にCEA委員長の重責を担うグールズビー John Gress-Reuters

 このところ米大統領経済諮問委員会(CEA)の動向に注目が集まっている。オバマ大統領が有権者のいら立ちを抑えるために急ピッチの景気回復の実現に躍起になっているのだから当然だ。

 クリスティーナ・ローマー前委員長の今月上旬の退任を受け、オバマは9月10日の記者会見でオースタン・グールズビー(41)を後任に指名したことを発表した。この決定から、景気対策を少なくとも今後数カ月間で軌道に乗せたいという意欲が感じられる。

 エール大学出身で、「数学屋」を自任するグールズビーはオバマ政権発足後にCEA委員に就任。データの扱いにたけ、コミュニケーション能力も高いグールズビーはテレビ局のインタビューで広報官役を務めることも多かった。

 グールズビーに関する最も有名なエピソードの1つは昨年の「ワシントンで最もおかしなセレブ」コンテスト。グールズビーはホワイトハウスでの仕事の内幕を暴露するような一人芝居を演じて優勝をさらった。

 先月、メディアがCEA委員長の後任の予想で大騒ぎしていたとき、クリントン政権時代に委員長を務めたローラ・タイソンと共によく名前を挙げられたのがグールズビーだった。

外部の人材を起用できない事情

 グールズビーの指名には意外性が皆無と言っていい。グールズビーは経済問題について大統領に助言するCEA委員になるための承認を上院から受けており、委員長に昇格する際に承認は不要。それに、2人は長年の友人で気心が知れている。

 最終的にグールズビーがCEA委員長に選ばれた背景にはこんな事情もある。オバマの経済政策はこの2年間、激しく批判されてきた。ここで外部の人材を委員長に起用すれば、これまでの戦略がうまくいっていないと公に認めることになる。

 だがグールズビーをCEAのトップに昇格させれば政策の一貫性をアピールできる。オバマとしては、中小企業と研究部門に対する減税や、インフラとクリーンエネルギーへの集中的な資金投下などで景気を浮揚させたいところだ。

 オバマは景気回復を促す試みが軌道に乗るまで少し猶予が欲しいと国民に呼び掛けている。時間は刻々と過ぎている。グールズビーには即断即決が求められる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中