最新記事

マーケティング

勧誘メールの成功率を上げるコツ

2009年11月12日(木)19時03分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

薬の飲み忘れもメールで防止

 同じようなことが処方薬の世界でも起きている。貯金と同じで、病気の際には薬を飲むことが自分の体のためになることくらい誰だって知っている。薬の飲み忘れがよくないことも百も承知だ。

 だが製薬会社や医療関係者にとっては頭の痛いことに、患者はなかなか投薬の指示を守ろうとしない。米医薬卸大手のマッケソン社のレポートによれば、自分で買った薬を飲まない患者はかなりの数に上るという。ある調査では、飲むべき薬を飲まなかった人のうち79%が「単に飲み忘れただけ」と答えたという。

 これは製薬会社にとって大きな売り上げ減の原因となるばかりではない。臨床試験の結果にも悪影響を及ぼしかねないし、慢性疾患を抱える人にとっても危険だ。

 自分の体を守ろうと思う意志や、妻や夫からの「今日はコレステロールを下げる薬をちゃんと飲んだ?」「ベーコンチーズバーガーを食べたから、2つ飲んでおいたら?」といった言葉にも、飲み忘れ防止効果はあまり期待できないようだ。

 こんな場合にもメールは役に立つかもしれない。フィナンシャル・タイムズ紙が報じたところによると、製薬大手のノバルティスは医療技術関連企業のプロテウス・バイオメディカルと提携してハイテクな薬の飲み忘れ防止システムを開発中だという。

 これはまず、患者の肩にセンサーを埋め込む。その上で小型のICチップを埋め込んだ錠剤を飲むと、薬が消化された後にチップから「次を飲みなさい」というメッセージが発せられ、肩のセンサーを経由して携帯電話に送られるというものだ。

 降圧剤を使っている患者20人を対象にした臨床試験では、きちんと薬を飲む率が30%から80%へと上昇したという。他の多くの企業でも類似の技術の開発が進められている。電話やメールでお知らせを送る「メドプロンプト」や「iリマインダー」もそうした技術の一例だ。

「貯金しなさい」「薬を飲みなさい」と注意を喚起するメールなど、本来ならば不要なはずだが実際にはとても役に立っている。だとしたら他にも応用は可能なはずだ。

 例えば学校に行っている子供には「昼食に野菜を食べなさい」とか「ちゃんと手を洗いなさい」とか指示するメール。親元を離れて暮らす大学生には「洗濯をしなさい」とか「実家に電話しなさい」とせっつくメールもいいかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中