最新記事

五七五の魔法をロシアに伝える

続 ニッポン大好き!

味噌、ネイル、短歌、神道とロボット
「和」の凄さは外国人の匠に聞け!

2010.08.06

ニューストピックス

五七五の魔法をロシアに伝える

アレクサンドル・ドーリン(日本文学研究者、国際教養大学教授)

2010年8月6日(金)12時00分
山中泉

言語を超えて ドーリンは五七五のリズムをロシア語で表現する方法を考案 Courtesy of Alexander Dolin

「ロシアの伝統的な詩と俳句の違いは大きい。地上の動物と鳥を比べるようなものだ」と、アレクサンドル・ドーリン(58)は言う。「明確な叙述を特徴とする西欧の詩とは違い、俳句は連想の力を効果的に使う。しかし欧米人もロシア人も、前提を説明されれば俳句の美しさを理解できる」

 ドーリンは日本文学の専門家として、短歌や俳句、近現代詩をロシアに紹介してきた。30冊以上にのぼる著書で取り上げた対象は幅広い。『古今和歌集』や正岡子規、種田山頭火の作品をロシア語に翻訳する一方、大佛次郎の『赤穂浪士』など小説の翻訳も手がけてきた。

 07年には近現代の短歌、俳句、詩の選集『日本近代現代詩歌史』をまとめた。一方では武道研究家の顔をもち、『拳法 東アジアの武芸の伝統』はロシアや東欧で計100万部売れたベストセラーだ。

 詩の翻訳には独特のむずかしさがあるとドーリンは言う。「短歌や俳句などの定型詩には、(季語などの)決まったイメージと、一定した魔法のようなリズムがある。それをロシア語で伝えるには、ロシア語特有のリズムに置き換えることが必要だ」。彼は五七五のリズムをロシア語で表現する方法を考案し、翻訳を洗練させていった。

 この10年間のロシアはあらゆる分野で日本文化ブームだった。モスクワには400店以上の日本料理店があふれ、村上春樹の小説やオタク文化も受け入れられた。一方で、ソ連時代から日本の古典文学の翻訳は数多く、読者は現在でも数万人はいる。「たとえば、『閑(しずか)さや 岩にしみ入る 蝉の声』という句は、高校生でも知っている」とドーリンは言う。

 時代を反映して、最近の大学ではビジネス専攻が増え、日本文学専攻の大学院生はほとんどいない。「日本文学に興味をもつ人は増えているのに、プロの研究者が少なくなっている」とドーリンは残念がる。彼の責任は増すばかりだ。

[2008年10月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

みずほFGの10ー12月、純利益14%増の3299

ビジネス

焦点:トヨタとアクティビスト、ぶつかる価値観 豊田

ワールド

インドネシア貿易黒字、12月は25.2億ドル 予想

ビジネス

午後3時のドルは154円後半で売買交錯、ドル安と円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 7
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 10
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中