最新記事

サフィア・ミニー(日本/途上国支援)

社会起業家パワー!

社会貢献しながら利益も上げる
新世代のビジネスリーダーたち

2009.10.13

ニューストピックス

サフィア・ミニー(日本/途上国支援)

ファッションだってやさしくなくちゃ

2009年10月13日(火)11時31分
芹澤渉

 東京の表参道や自由が丘に直営店を構え、ユナイテッドアローズやトップショップなどの人気ブティックでも見かけるファッションブランド「ピープル・ツリー」。高級ファッション誌ともコラボレートする注目ブランドだ。

 だが普通の人気ブランドと違うのは、ピープル・ツリーのシャツやスカートが途上国の生産者を支援する目的で作られていること。製品を買いたたかず、仕事に見合ったお金を生産者に払って作られる「フェアトレード(公正取引)ファッション」なのだ。

 夫の転勤で来日したイギリス人のサフィア・ミニーが、同ブランドを展開するフェアトレードカンパニーを立ち上げたのは95年。当時フェアトレードといえば、コーヒーやチョコレートなどの食品が主流だった。衣料品はあってもあかぬけず、純粋におしゃれのために買えるものは少なかった。

衣類にこだわった理由

「流行遅れと思われてきたフェアトレードの服飾品にファッション性を持ち込んだ功績は大きい」と、社会起業家を支援するシュワブ財団(ジュネーブ)のディレクター、ミリアム・シューニングは言う。

 ミニーがファッションを選んだのには理由がある。途上国では豆を生産するだけで、焙煎やパッケージングは先進国で行うコーヒーなどと違い、原料の生産から縫製まで多くの途上国の労働者を巻き込めるからだ。

 ピープル・ツリーはインドやケニアなど、世界20カ国で製品を生産。一般のブランドより30~100%高い賃金を生産者に支払うほか、デザインや品質管理のノウハウも提供する。

 通常のカジュアルブランドと比べると割高な製品もあるが、売れ行きは好調。ミニーが「品質に関しては世界一厳しい」と評する日本人にも受け入れられ、イギリスへも進出。年商は10億円に達した。

 それでも利益を出すのは生やさしいことではない。大手メーカーが数カ月単位で新商品を出すなか、手作りの同社製品は製造に半年かかる。生産者が生活苦から高利貸しに借金しなくてすむよう、工賃を前払いしていることも資金繰りを圧迫する。

 だが苦労のかいはある。「われわれが支援するまで学校に行けなかった女の子が、看護師や政治家になって社会に貢献しているのを見るとうれしくなる」と、ミニーは言う。これなら商品を買った消費者もうれしいにちがいない。

[2007年7月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ

ワールド

台北駅近くで無差別刺傷事件、3人死亡 容疑者は転落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中