最新記事

岡野雅行(岡野工業社長)

世界が尊敬する日本人

国境と文化の壁を越えて輝く
天才・鬼才・異才

2009.04.08

ニューストピックス

岡野雅行(岡野工業社長)

米軍も頼りにする職人芸

2009年4月8日(水)18時39分
川口昌人

 内外のモノづくりの専門家が「最後の駆け込み寺」として頼りにする町工場。それが、東京都墨田区にある岡野工業だ。社員わずか6人の同社の取引先には、日本や外国の大企業に加え、NASA(米航空宇宙局)や米国防総省までが名を連ねる。アメリカで認められた特許もいくつももっている。

 「うちはよそでできない仕事だけをずっとやってきた」と、社長の岡野雅行は歯切れのいい江戸弁で言う。硬くて加工しにくいステンレスを深くプレスした携帯電話のリチウムイオン電池のケース、痛くない超極細の注射針、モリブデンやチタンといった特殊な金属の加工など、どこの企業にも手に負えなかった難題を、岡野は解決してきた。

 軍事機密の塊のような米軍のステルス戦闘機にも、岡野工業の開発したカーボン加工技術が使われている。世界中の高級車のバンパーに取りつけられている超音波センサーの小さなケースでは、同社製品が世界シェアの80%を占める。アメリカのある有力誌は、岡野を取り上げた記事に「ヒトは機械に勝つ」という見出しをつけた。

 岡野工業の技術の核は、高度な金型製作技術とそれを使ったプレス加工のノウハウだ。金型とプレス機の相性や潤滑剤のブレンド、多数の工程を1つの機械にまとめて大量生産とコストダウンを可能にする工夫。どれも岡野の探求心とアイデア、職人芸が生かされている。外国企業の視察も多く、最近は東欧諸国からの見学者が増えた。

 「最先端の仕事をしているから、最先端の情報が入ってくる。5年先、10年先の世の中が読めるし、それを見据えてもっとすごいものを考えられる」。それが続くかぎり、岡野の工場の門をたたく人は絶えないだろう。

[2004年10月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国はレアアースの厳格な輸出管理継続=在中国EU商

ワールド

カーク氏射殺後も「冷静さ呼びかけず」、州知事がトラ

ビジネス

ノボノルディスク肥満治療薬、睡眠障害など幅広い用途

ワールド

インドネシア国会、中銀の成長支援役割強化などで法改
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中