コラム

低賃金労働者の「怒り」を「感動」へ変換する、中国共産党のプロパガンダ

2025年12月27日(土)08時45分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

「ポジティブエネルギーを君の体内に注ぎ込む」

国民の怒りを感動へと変換すること。それこそが、中国共産党が長年にわたり最も得意としてきた宣伝システムである。天災や人災、深刻な貧富の格差に直面しても、官製メディアが政府の失策を省みることはない。代わりに繰り返し喧伝されるのは、「多難興邦(ドゥオナンシンバン)」のようなスローガンだ。

「正能量」にまつわる象徴的な社会事件も存在する。深圳のある経営者は女性の部下をたびたびだまし、性的暴行を加えていた。部下が拒否すると、経営者はこう言い放ったという。「君はネガティブエネルギーに満ちている。だからポジティブエネルギー(正能量)に満ちている私が、そのエネルギーを君の体内に注ぎ込んで中和しなければならないのだ」


ポジティブエネルギーを人民に注入する一方で、上海市政府は最近、不動産不況のネガティブ情報を流したSNSアカウントを次々削除・凍結した。その数は、計11万件に上る。


ポイント

美食快送/灵活休息
「おいしい食事をすぐ配達」/「臨機応変に休息」。「灵活休息」は失業者のアルバイト労働を美化するスローガン「灵活就业(臨機応変に就職)」の皮肉。フードデリバリー配達員の自殺も問題になっている。

多難興邦
苦難が私たちをより強くするという意味。2008年の四川大地震で被害に遭った学校を訪れた当時の温家宝(ウエン・チアパオ)首相が呼びかけた言葉として有名。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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